最低賃金の引上げ額が過去最大に

全国の小・中学校では今日から夏休みが始まる地域も多く、各地で梅雨明けが発表されるなど、本格的な夏がいよいよ始まった。毎年、この時期になると、最低賃金が見直され、目安が示される。2021年7月14日、中央最低賃金審議会の小委員会は、2021年度の地域別最低賃金の改定に関して、全国平均の時給を930円とする目安をまとめた。引上げ幅は28円で、過去最大となる。


これに先立ち、2021年6月18日、「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太方針2021)が閣議決定。「グリーン」「デジタル」「活力ある地方創り」「少子化対策」の4つが、今後の成長を生み出す原動力として位置づけられた。その中で、「より早期に全国加重平均1,000円とすることを目指し、本年の引上げに取り組む」と明記されており、活力ある地方創りとして、賃上げを通じた経済の底上げが掲げられている。


実際に最低賃金をみても、地域格差は大きいと言える。厚生労働省の「令和2年度地域別最低賃金改定状況」によると、昨年(2020年度)の最低賃金の全国加重平均額だった902円を上回ったのは7都府県(東京、神奈川、大阪、埼玉、愛知、千葉、京都)のみで、政府が掲げる1,000円以上となったのは、そのうち東京(1,013円)と神奈川(1,012円)の2都県だけであった。最低額は792円で、最高額である東京の1,013円との差は221円にもなる。


一方で、厚生労働省の公表数値に目が留まる。厚生省では2020年3月から、新型コロナの影響で、休業や失業状態などで収入が減少し生活資金に困った人たちに対し、生活福祉資金の特例貸付として「緊急小口資金」「総合支援資金」を実施している。この特例貸付の累計支給申請件数は254万3,274件となり、累計支給決定額は1兆677億円にのぼる(2021年7月10日時点速報値)。これはリーマン・ショック時をはるかに超える額だという。


今年度の最低賃金の目安引上げに対しては、日本商工会議所および全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会が「到底納得できるものではない」「中小企業・小規模事業者の窮状、とりわけ困窮している飲食業や宿泊業などの事業者の実態や痛みを理解していない結論と言わざるを得ない」とし、「廃業が更に増加し、雇用に深刻な影響が出ることを強く懸念する」とのコメントを共同で発表するなど、様々な声が聞かれる。


前述したような新型コロナによる不況下、この最低賃金の引上げがどのような効果をもたらすのか。「活力ある地方創り」実現に向け、政府の果たす役割は大きく、今後の更なる支援が求められている。

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