コロナ関連融資は今後の「ゾンビ企業」増加の引き金か?

「ゾンビ企業」。
バブル崩壊後、90年代後半の日本で生まれた言葉で、言葉通り解釈すると実質的に倒産状態であるにも関わらず、なお営業を継続している企業が当てはまるでしょうか。


ただし、この「ゾンビ企業」は様々な見解があり、一様な定義はないと言われています。


例えば、債務不履行の状態が続いている企業や、バランスシート上で累積損失によって債務超過の状態にある企業などが該当するでしょう。さらには、銀行融資の返済条件を変更するリスケ企業や過剰債務を抱える非効率な企業も当てはまると言えます。


加えて、立場によってもその定義は変わり、マクロ経済学的視点では「生産性の低い企業」、政治的な視点では「雇用を確保できない企業」などもゾンビ企業と考えられています。


2022年7月に発表した帝国データバンクの現状分析[1]では、国際決済銀行(BIS)のゾンビ企業の定義である「3年以上に渡ってインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が1未満、かつ設立10年以上」を用いて、「ゾンビ企業」率を推計しました。

【図表1 「ゾンビ企業」率の推移】

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2008年秋のリーマン・ショック以降、「ゾンビ企業」の比率は年々上昇し、2011年度には19.8%と約2割に達しました。同時期に、全国の企業倒産件数が年間1万1,000~1万3,000件となるなかで施行された中小企業金融円滑化法により、延命した企業が多かったためでしょう。


その後、2010年台後半は10%前後で推移していましたが、2020年度は11.3%となり2019年度の9.9%から1.4ポイント上昇しています。


これは、新型コロナ禍におけるゼロゼロ融資をはじめとする新型コロナ関連融資などがその一因となっていると考えられます。


この「ゾンビ企業」率の推移をみますと、リーマン・ショック、新型コロナウイルスのパンデミックなどから、政府の金融政策にもとづく銀行からの手厚い金融支援、緊急的な危機対応の政策(補助金やゼロ金利政策など)が「ゾンビ企業」増加の1つの要因となっていると言えるのではないでしょうか。


とりわけ新型コロナ関連融資は、もともと業績が悪い企業の延命につながったとの声も聞かれますが、こうした支援策を足掛かりに苦境から脱し、健全化した企業が一定数存在することも否定できません。


新型コロナウイルスや円安など企業を取り巻く環境は厳しさが続いています。引き続き金融支援策が実施されることで、当面は「ゾンビ企業」の延命が続くことが予想されるでしょう。


しかし将来的には、新型コロナ関連融資などの借入金返済負担とともに、金融機関の支援を受けられなくなることや、後継者の不在などから行き詰まる企業が徐々に表面化する可能性もあると言えます。



[1] 帝国データバンク「利払いの負担を事業利益で賄えない「ゾンビ企業」の現状分析

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