アジアの時代、21世紀最初の寅年に想う

2010年01月08日

2010年、新政権が底上げを目論んだ内需は総崩れで、"虎口の難"とも言える厳しいスタートとなった。
国内では雇用環境の悪化や所得の減少、年金問題など先行き不安が払拭されないなかで、家計は"虎の子"の貯蓄を取り崩して生活費にまわさざるを得ない状況にある。デフレスパイラル脱出に"虎の巻"などあるはずもなく、新政権発足後、財政政策や金融政策にも手詰まり感は強い。


政局も今夏の参院選を前にして不安定さが増している。"龍虎の争い"は言い過ぎの感もあるが、鳩山氏と小沢氏の数々の言動や権力をめぐった周囲の綱引きが報道されるなかで、企業や家計では新年度の政策に対して不透明感も増幅している。


外交面でも厳しい局面にあることに変わりはない。
政権発足直後には、鳩山イニシアティブで鮮烈な外交デビューを果たしたものの、その後は"虎の尾を踏む"ことも覚悟のうえで「対等な関係」を目指したが、日米外交に目立った成果は上がっていない。
かえって米国との関係悪化を招き、環境問題でも米国の協力を取りつけられず、日本のリーダーシップを発揮できない状況に陥っているようにさえみえる。


一方、中国やインドは目覚ましい経済発展とともに、国際社会における存在感が一段と増している。南米など他の新興国も"虎視眈々"と今後の成長戦略を練っているだろう。


こうしたなか、日本企業も成長戦略の転換を図っている。大手では、すでに内需ありきのシナリオから脱却し、"虎穴に入らずんば虎子を得ず"の勢いで、中国企業との合弁や現地法人の設立、新興国向け製品の開発・投入など、アジア需要の取り込みを加速。強者連合の誕生など、再編劇も活発化している。


日本は"張り子の虎"ではない。経済力や軍事力において、依然、世界トップクラスであり、モノづくりの発想や技術力、文化芸術等のソフトパワー、ホスピタリティなど、高い水準を保持しているものも多数ある。


21世紀はアジアの時代である。今後は、成長著しい中国と"龍虎相打つ"ように互いによき競争相手として切磋琢磨し、世界の人々の発展や幸福のため、アジアの総合力を発揮すべきである。
維新後、百数十年の豊富な経験を持つ日本こそ、この転換期に大きな役割を担うことができるはずだ。

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