政権交代で変わる税制

政権交代後で初となる2010年度税制改正大綱が2009年12月22日に閣議決定された。


所得税や住民税に関しては、民主党のマニフェストにある子ども手当の創設を念頭に、税率構造改革のほか、一般扶養控除や特定扶養控除が見直しの対象になっている。さらに、社会保障・税共通の番号制度の導入、所得控除から税額控除・給付付き税額控除・手当への転換を進めることなどが、改革の方向性として示された。政権交代が起こったことによる変化であろう。


累進課税による所得再分配の機能が低下しているなか、特に後者の給付付き税額控除などは低所得者ほど有利となる制度である。しかし、そのためには正確な所得把握が必要となり、前者の番号制度の導入が前提条件となる。


では、税率構造はどうだろうか。1986年当時の所得税率は10.5%~70%の15段階であり、個人住民税と合わせた最高税率は88%であった。現在の所得税率は5%~40%の6段階で、個人住民税と合わせた最高税率は50%となっている。他方、アメリカ(ニューヨーク市)は所得税率が10%~35%で、地方個人所得課税と合わせると最高47.6%であり、フランスは所得税率が5.5%~40%、社会保障関連諸税と合計で最高48%、イギリスは所得税のみで20%~40%である。税率でみる限り、現在の日本の税率構造は他の先進国と大きな違いはない。


一方、ドイツは世界でも珍しい所得税構造を採っている。ドイツの所得税は課税所得に対応した税率は存在せず、一定程度の課税所得まで税率は連続的に変化する。しかし、現在の連立政権は段階的な所得税構造へ移行することで、中低所得層で所得税の累進が緩和され、より多くの恩恵を得られる改革を計画している。このような変化は2009年9月の選挙で当時の連立政権が崩壊したことがきっかけとなっている。


税制は多くの国で政権交代によりしばしば変わる。税制はその国の政権政党の経済哲学を具現化したものであり、その性格が如実に表れるものである。日本も例外ではないということであろう。

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