「春節」需要の取り込み

日本政府観光局(JNTO)が発表した2010年の訪日外客数(推計値)は、過去最高だった2008年(835万)を上回る861万人で前年比26.8%増となり、大阪万博が開催された1970年(同40.4%増)に次ぐ伸び率を記録した。
国別の構成比は、韓国28.3%(244万人)、中国16.4%(141万人)、台湾14.7%(127万人)、香港5.9%(51万人)と続く。トップの韓国は2009年が急激なウォン安により訪日観光客が激減(前年比33.4%減)したため2010年は反動増の影響が強く、ウォン安前の2008年の水準(238万人)に戻ったに過ぎない。


一方、中国は、富裕層の増加に加え、中国人に対する個人観光ビザの発給条件の緩和(2010年7月)から、前年比+40.5%と大幅増となった。訪日外客数の国別構成比で2007年に米国を抜いて3位に浮上し、2010年に台湾を抜いて2位となり、ますます存在感を増してきた。


今日2月3日は「春節」(旧正月)、訪日観光客の多い中国、韓国、台湾などでは、2日から7連休の春節休暇に入っている。春節期間中は生産や物流では、「アジア地域の旧正月明けの荷動きに期待している」(紙卸売)、「中国生産している分が、春節で中国工場が長期休暇に入ることにより、国内生産に流れて来ている」(繊維)などプラス・マイナス両面の声が聞かれるが、小売業にとっては、客足が減る2月の需要取り込みの好機となる。


この好機に中国人客の取り込みを強化する小売業の動きが活発となっている。
ビックカメラは一部店舗で始めた中国向けの商品配送を拡大、また、銀聯カード決済が可能なレジを増加する。京都市内の商店街などでつくるクレジット決済会社KICSは、2011年から銀聯カードの取り扱いを加盟店1千店舗以上で開始した。また京都大学の中国人留学生に協力を依頼し各店舗の通訳業務でフォローする体制をとる。原宿や表参道の商店街振興組合の原宿表参道欅(けやき)会(約800店舗が加盟)では、訪日観光客の接客用に、約250店舗で外国人との会話を補助する機能を持たせたタブレット端末を試験導入した。


しかし、2010年9月の尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を契機に、中国からの観光客数は10月から12月の3カ月は前年割れとなり、政治的な緊張が与える影響の大きさを裏付けた。少子化や景気低迷で内需の弱くなっている日本にとって、存在感を増す中国との関係良化は必須であり、外交問題をすみやかに解決する政治力が重要となっている。

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