金融市場再編に潜むリスク

東京証券取引所(以下、東証)は3月2日、ニューヨーク証券取引所(NYSE)などを運営する時価総額世界1位のNYSEユーロネクストと取引所の売買システムと証券会社をつなぐネットワークの相互接続の検討を開始した。
そもそもNYSEユーロネクストは2007年に、ニューヨーク証券取引所を運営する「NYSEグループ」とフランス、オランダ、ベルギー、ポルトガルの証券取引所を運営する「ユーロネクスト」が経営統合して世界1位となり、2月にはドイツ取引所との合併に合意した。いま世界の取引市場の再編が進んでいる。


東証の上場外国会社数は、ピークだった1991年の127社から退場が続き右肩下がり、現在は12社と10分の1にまで落ち込んでいる。日本は、香港やシンガポールの金融市場に比べ、取引規制が強く、国際金融センターとしての評価が低下してきていたため、海外からの投資資金や新規上場の受け皿として、証券市場の活性化が求められている。
他国の市場と連携することは、取扱銘柄や出来高の増加や取引時間に厚みがでることになり、投資家は選択肢が増加、上場する企業にとっては知名度向上や資金調達も間口が広がることになり歓迎されるべきことだ。


しかし取引量の拡大にともなうリスクもある。近年のネット取引の台頭やシステム売買が増加、システムの許容量が取引量の拡大ペースについていけなくなり、取引所では応答時間の短縮や処理能力の向上へ取り組むためシステム改修に取り組んできた。ただ、システム改修に性急に取り組んだ結果、日本の市場でも何度もシステム障害が発生している。最近でも、ロンドン証券取引所は2011年2月に新システムを導入したが、システムの初期不良が原因で、一時、取引が停止となった。


政府は、新成長戦略内で、21の「国家戦略プロジェクト」の一つとして「総合的な取引所(証券・金融・商品)の創設の推進」を盛り込み、2010年10月には「総合的な取引所検討チーム」を発足させた。
障害発生は取引所の信頼を失いその存続を危うくし、結果として国益を損なうことにもなりかねない。これまでの過去の失敗を糧に、世界でもっとも信頼ある取引所としての地位を築くことが望まれる。

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