復興財源に増税は妥当か

2011年5月2日、東日本大震災からの復興に向けた2011年度第一次補正予算が成立した。一次補正予算は、がれき処理や仮設住宅の建設、道路・港湾の修復などが中心で、総額4兆153億円である。
財源には基礎年金国庫負担に充当予定だった2兆4,897億円や、子ども手当の減額2,083億円、高速道路の原則無料化社会実験の一時凍結分1,000億円、経済危機対応・地域活性化予備費の減額8,100億円など、既定経費の減額で3兆7,102億円を捻出した。不足分は、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構納付金と公共事業費負担金収入といった税外収入で補うこととなり、新たな国債発行は行っていない。


今後は二次補正の内容と規模のほか、財源が重要な論点となる。首相は、諮問機関の復興構想会議が6月末にまとめる復興ビジョンの第1次提言を踏まえて二次補正を編成する方針というが、財源確保として復興に限定した「復興再生債」の発行を検討しているほか、償還財源として増税も想定している。


しかし、復興の償還財源に増税が必要、というのは本当だろうか。マスコミなどの世論調査では増税を容認するという意見が半数を超えているが、これは「何かしら協力したい」という国民の意思の表れと捉えるのが妥当であろう。他の財源についての選択肢を提示した上で増税の賛否を問うべきである。


復興支出の最大の特徴は"一時的な支出"ということであり、恒久的に必要となるものではない。このような一時的な支出に対しては、消費税などの租税は適切な対応策とはならない。対応策としては、例えば、国債発行を日銀引受で実施するのも1つの方法である。日銀引受に対しては過去の戦費調達に利用され、その後のインフレを招いた反省から反対する声も多い。しかし、毎年、日銀引受が実施されていることは意外と知られていないのではないだろうか。2010年度の日銀引受額は約12兆円である。ちなみに、2005年度は約23兆円だったが、特にインフレは発生しなかった。単純に考えると、あと10兆円程度を日銀引受で調達することは可能なのではないだろうか。


それでも不安ならば、借換債を償還額いっぱいまで引き上げて、それを復興国債として市中消化することも考えられる。これならば、現行予算の範囲内で可能となる。増税はあくまでも最後の手段であり、その前にできることはたくさんある。

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