西高東低続く客室稼働率

2011年07月05日

旅館・ホテルの6月の景気DI(26.9)は前月比7.9ポイント増と大幅に改善した。5月まで全51業種中で3カ月連続の最低から2カ月連続で改善して最悪期は脱したものの、依然として下から6番目の低水準にある。


東証上場のホテルREIT「ジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人」が月次で発表している3月から5月の客室稼働率をみると、震災の影響から西高東低の構図となっている。
関東圏では、オリエンタルホテル東京ベイが、震災により一時休園を余儀なくされた東京ディズニーリゾートの影響を大きく受け、客室稼働率は3月44.7%(前年同月91.7%)、4月17.9%(同82.5%)と大幅に減少した。その後、4月15日のディズニーランド再開、28日のディズニーシー再開はあったが、宿泊者数の減少だけでなく、婚礼宴会の延期やキャンセルにより、レストラン売上高も宿泊者数減少により落ち込んだ。かき入れ時であるゴールデンウィークを含む5月も客室稼働率は53.5%(前年同月89.4%)と低調だった。


一方、関西圏ではプラスの効果が数値にも表れている。神戸メリケンパークオリエンタルホテルの客室稼動率は、震災から間もない3月(74.7%、前年同月78.6%)、4月(61.4%、同78.5%)は東日本大震災の影響によりビジネス客を中心とした需要が減少したが、5月には、修学旅行等の代替需要の取り込みに成功し83.3%(同75.7%)と回復している。
なんばオリエンタルホテルも、震災の影響により訪日外国人客数が減少したものの、関東からの退避需要を取り込み、3月(86.4%、同83.4%)と増加、4月(89.8%、同85.7%)、5月(89.0%、同80.3%)といずれも前年実績を上回った。


いまだ震災の影響を大きく受けている旅館・ホテルからは、「震災や原発事故による消費自粛、海外の風評被害も収まらない」などの声が多く寄せられており、先行きに関しても「原発事故の影響により外国人観光客は激減。特に団体予約は皆無に近い。また消費自粛ムードによる国内観光客の減少も当面続くと懸念している」と厳しい見通しをたてている企業も少なくない。
復興予算確保のため、高速道路の休日の上限1,000円が6月19日に終了したことは、ホテル・旅館業界にとっては、夏休みの旅行需要の取り込みにも悪影響が出そうだが、東日本大震災の被災地域の復旧・復興のためには、当面、我慢が続きそうだ。

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