言い伝え

2012年04月04日

株価が急上昇している。リーマンショック後、長らく低迷していた株価は世界的な金融緩和をきっかけに反転し、日経平均株価は1万円を超えた。同時に円高の修正が進み、輸出企業を中心に業績回復の期待から、1万3,000円台への可能性も語られ始めた。
しかしその一方で、この上昇相場は欧州、米国、日本と、それぞれ「超」が付く金融緩和を裏づけとした、過剰流動性供給による加熱状態だと指摘する専門家もいる。過去に起きた株式需給の経験則になぞらえ、今後一転して変動するリスクが潜在していると警鐘を鳴らしているのだ。


ところで東日本大震災で津波による大きな被害を受けた沿岸部に、様々な「言い伝え」があったことが明らかになっている。「ここより下に家を建てるな」、「津波が来たら井戸を見ろ」、「津波てんでんこ」などが石碑に記されている。太古の時代から多くの犠牲者を出した津波に対する警鐘が、石碑によって引きつがれていた。


そこで、株式市場で語り継がれてきた「言い伝え」を調べてみたら、「仕手株」の世界では事情通と言われた中井戸玲次氏(ペンネーム)の『仕手株辞典』(日本事業通信網)に、いくつかの例えが格言として紹介されている。
◆麦わら帽子は冬に買え→麦わら帽子は夏に使うものだから、夏になると価格が上昇する。冬ならば誰も買う人がいないので安い。つまり株は安いときに仕込んで高くなったら売るといった相場の基本を示唆する。
(今年の寒波はヨーロッパと、暖かいはずのタイから来たので買い手なしだったが)。
◆石が浮かんで木が沈む→市場の材料は思ったとおりに動かない。理不尽に見える値動きにも、振り返ってみるとそれなりに理由がある。
最近は理不尽なニュースばかりで、それなりの理由も見つけ難い世の中か。
◆山高ければ谷深し
(これは読んで字の如しだが、「新格言集」にはこのような進化系も。→◆山高ければ上れない、谷深ければ戻れない)。
◆国策に金を乗せよ→国の政策に添った銘柄に投資すると成績が良くなる。
(JAL、東電、エルピーダと国策企業の株価で大損した投資家は、昔はよかったと嘆いているに違いない)。


バブル崩壊、ブラックマンデー、リーマンショック、ギリシャ国債危機など、数多くの試練が押し寄せる株式市場だが、格言として生き残る教訓もあれば、現在では当てはまらない教訓など、時代の変化も映し出されてなかなか興味深いものだ。

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