政策に惑わされず、持続的な成長を目指して

2012年05月07日

本日、プレスリリースしたTDB景気動向調査2012年4月結果において、国内景気は回復力の弱さが浮き彫りとなったが、こうしたなかでも政策支援の恩恵を受けている地域や業界では目立った回復をみせている。
特に、自動車関連産業はタイの洪水被害からの挽回生産の拡大とエコカー補助金の復活効果によって生産・販売とも好調である。景気DIは自動車関連製造業が含まれる「輸送用機械・器具製造」が48.0、「自動車小売」が46.7(前月は年度末需要も重なって51.5)であり、他業種と比べて際立って高水準だ。


ただ、これらの業種では早くもエコカー補助金終了後の反動減を懸念する声が高まり始めている。
今回のエコカー補助金は2011年12月20日から2013年1月31日までの新車登録が対象となるが、予算は限られている。TDB景気動向調査では「エコカー補助金は8~9月に終了を見込んでおり、その後は買い控えが起こる」との見解が企業から挙がっているが、消費者も生産・販売者も前回のエコカー補助金(2010年9月7日に打ち切り)の駆け込みの動きとその後の反動を経験しているだけに、この8~9月終了という見込みすらさらに前倒しとなる可能性もある。


前回のエコカー補助金終了前後の景気DIは、「輸送用機械・器具製造」が終了2カ月前にピーク(43.7)をつけ、「自動車小売」は終了前月にピーク(42.7)をつけた。その後は年末に底を打つまで「輸送用機械・器具製造」が約10ポイント、「自動車小売」が約20ポイント急落した。
そして、回復する余裕もなく東日本大震災が発生し、夏以降の円高進行、タイの洪水被害の影響拡大などにより低迷が続いてきた。


今回は震災後にも悪材料が重なったことから、景気DIの改善ペースは前回を大きく上回っている。"山高ければ谷深し"というような反動は杞憂に過ぎないと思いたいが、実際、懸念される指標もある。
TDB景気動向調査における生産・出荷量DIと在庫DIの状況をみると、前回、メーカーにおける在庫積み増しの力強い動きは8カ月間に及んだが、今回はすでに8カ月間に達している。震災などの影響も含んでいるため単純比較はできないものの、海外の経済情勢も先行き不透明なだけに、やや注意すべき動きである。


政策的な支援はあくまでも応急手当であり、それとともに経済を成長軌道に乗せる柱となる戦略をたてて実行し、効果を上げることが政府の重要な役割のはずだが、現時点でそれは期待できそうにない。
現状、円高や貿易、エネルギー政策など家計や企業の自助努力では解決困難な課題が山積みである。しかし、私も含めて個々ができるかぎりの成長戦略とリスク対応策を練って、小さくてもその力を結集させていくことで、震災からの復興や新たな成長の手応えをつかむこともできるのではないか。そう信じて前向きに取り組みたい。

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