将来人口のインパクト

3月27日、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が2040年までの「日本の地域別将来推計人口(平成25年(2013)年3月推計)」を発表した。大都市圏での高齢化が一層進み、65歳以上が人口に占める割合を表す高齢化率は2040年に全都道府県で30%を超えるとしている。また、2020~25年以降にはすべての都道府県で人口が減少すると予想しており、前回推計(2007年公表)より5年早まっている。少子高齢化と人口減少がこれまで以上に前倒しされるとの見方である。


政策的には社人研の将来推計人口は公的年金など社会保障政策全般や教育行政にも関わってくる非常に注目度の高い推計である。今回の地域別将来推計では、2010年の国勢調査を基に市区町村別の推計を行い、その結果を合計して都道府県別の人口を算出するという方法をとっている(ただし、福島県は全県での推計のみ)。また、2040年の人口が2010年を上回る自治体(都道府県、市区町村)は80(全自治体の4.8%)で、下回る自治体は1,603(同95.2%)となる。そのうち、2~4割減少が785(同46.6%)、4割以上減少が385(同22.9%)となり、約7割の自治体で2010年に比べて人口が2割以上減少するとしている。


結果とともに、注目されるのは推計を行う際の前提である。これをみることで、社人研がどのような将来をイメージしているかがより明確になる。合計特殊出生率(一人の女性が生涯に生む子供の数)は2010年の1.3873から2040年には1.3457へと減少、平均寿命は2010年の男性79.64歳、女性86.39歳から2040年は男性82.82歳、女性89.55歳へと3年以上上昇するとしている。少子高齢化は継続するとの基本的見方である。


推計結果をみると、すべての都道府県で総人口が減少、また年少人口、生産年齢人口の減少とともに高齢化が進展すると見込まれており、税収や社会保険料の減少が予測されるなかで医療・介護制度を整えなければならない。さらに、企業活動においては社内における年齢構成や賃金制度の設定、商圏人口の見直し、需要予測の修正やそれにともなう設備投資計画の見直しなど、さまざまな分野に関わってくる。もちろん、推計の仮定値である各都道府県の人口移動を示す将来の純移動率は今後の復旧・復興の進捗状況等に大きく影響を受けて変動する性質のものではあるが、人口は政策立案や企業活動における基礎となる数字だけに、今回の人口推計は非常に大きなインパクトを持っている。

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