2014年4月からの消費税率引き上げ決定、経済への悪影響を最小限に

10月1日、政府は閣議で2014年4月1日に消費税率を現行の5%から8%へ引き上げることを決定した。安倍首相は記者会見で、経済に与える衝撃を緩和する措置として、企業向け減税と5兆円規模の経済対策を策定すると表明した。同時に、法人実効税率の引き下げは真剣に検討を進めていくとしている。また、2015年10月に予定されている10%への引き上げは、経済状況を勘案して判断時期を含めて適切に決断するとした。


改めて、現行消費税で2013年度予算の税収をみると、消費税(国税、4%)が10.6兆円、地方消費税(地方税、1%)が2.7兆円となっており、全体として消費税収は13.3兆円である。また、消費税(国税)のうちの29.5%(3.1兆円)は地方交付税交付金として地方に配分されるため、消費税収13.3兆円のうち、国が7.5兆円(5%のうち2.82%分)、地方が5.8兆円(同2.18%分)という構成となる。
さらに、消費税の使途をみると、国の7.5兆円はすべて、基礎年金、老人医療、介護という、いわゆる高齢者3経費に充てられる。これは、1999年度予算から消費税が福祉目的化されたことによる。しかし、これでも高齢者3経費のなかで消費税収を充てるとされている17.8兆円の一部にとどまるのが現状である。


消費税率が8%に引き上げられる2014年度以降は、消費税収6.3%(うち国分4.9%、地方交付税分1.4%)、地方消費税収1.7%となる。なお、地方交付税率(現行29.5%)は、2014年度22.3%、2015年度20.8%、2016年度以降19.5%となることが決まっている。
消費税率3%分の引き上げで消費税収は年8.1兆円増える見通しだが、国の歳出として使えるのはそのうちの約4.9兆円分であり、使途はすべて高齢者3経費に限定される。しかし、社会保障費は毎年1兆円ずつ増加する見込みであり、税率引き上げによる増税で社会保障財源を補うことができるのは数年分にとどまる。


国や地方の財政状況から、消費税率の引き上げはやむを得ないかもしれないが、いうまでもなく企業活動にも多大な影響を及ぼす。帝国データバンクが2013年8月に行った「消費税率引き上げに対する企業の意識調査」によると、業績に「悪影響」と回答した企業は半数超にのぼった。とはいえ、同様の2012年7月調査からは10ポイント以上減少したのも事実である。企業に及ぶ悪影響を可能な限り減らしていくためには、一段と景気を上向かせていくほかない。政府は一過性の経済対策だけでなく、継続的に日本経済が活性化するための成長戦略を打ち出し、実行することがなにより重要となってくる。

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