金融緩和、焦点は検証作業に

日本銀行は7月29日、政策委員会・金融政策決定会合において、(1)ETF(上場投資信託)買入れ額の増額、(2)企業・金融機関の外貨資金調達環境の安定のための措置、を柱とする金融緩和の強化を発表した。ETFの買入れ額は現行のほぼ2倍の6兆円となるほか、米ドル資金供給オペレーションに関しては金額に上限を設けないという(ただし、外貨であるため担保の範囲内)。


日本銀行は、今回の金融緩和決定の理由として、「英国のEU離脱問題や新興国経済の減速を背景に、海外経済の不透明感が高まり、国際金融市場では不安定な動きが続いている。こうした不確実性が企業や家計のコンフィデンスの悪化につながることを防止するとともに、わが国企業および金融機関の外貨資金調達環境の安定に万全を期し、前向きな経済活動をサポートする」としている。つまり、海外経済に不確実性が高まったなかで、企業や家計の心理や予想に働きかけるために実施したといえる。


さらに、政府が策定を予定している経済対策と歩調を合わせることで、金融緩和政策に対する相乗的な効果を期待していることが背景にある。


市場や多くのエコノミストは、7月の金融緩和を織り込んで行動してきていた。そのため、仮に前回会合に続いて今回も金融緩和が見送られていたならば、金融市場は再び急激な円高株安に見舞われていたであろう。


しかしながら、公表された資料のなかで最も注目されるのは、「2%の『物価安定の目標』をできるだけ早期に実現する観点から・・・(中略)・・・『量的・質的金融緩和』・『マイナス金利付き量的・質的金融緩和』のもとでの経済・物価動向や政策効果について総括的な検証を行う」としたところである。


これまで、日銀は、「"異次元緩和"政策はパッケージとして効果がある」とし、個別にどの政策が何に対してどの程度の効果があったかということについて、評価していなかった。今回の「総括的な検証」は9月までに行われ、その結果によっては、政策が転換される可能性もある。とりわけ、マイナス金利政策の導入で影響を受けた業界では、業績が検証結果に大きく左右されることになろう。

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