「山の日」マーケティング

今年から8月11日は「山の日」。「国民の祝日に関する法律」(2014年5月30日改正)によると、山の日は"山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する。"とある。


もともとは、日本山岳会をはじめとする山岳5団体が中心となり、祝日制定の働きかけを行い、全国で山開きが行われる6月の第一日曜という案が有力であった。しかし、お盆の時期に故郷に帰り地元の山を見つめ直す機会とする、という理由によって8月11日に落ち着いた。


では、実際に"山に親しんで"いるのはどのような人たちだろうか。


5年に一度実施されている社会生活基本調査の結果を基に、総務省がまとめた「登山・ハイキングの状況-『山の日』にちなんで-」(2016年8月10日公表)によると、15歳以上の「登山・ハイキング」の行動者[1]は972万7千人で、行動者率[2]は9.0%となっている(2011年時点)。特に、行動者率は男性65~69歳、女性60~64歳で最も高いという。さらに、平均行動日数[3]は、男女ともに75歳以上が最も多く、50歳代以降、歳を重ねるにつれて増加する。また、行動者率を出生年別に1996年、2011年時点でみると、団塊の世代を含む1942~1951年生まれの人が最も多く活動しているという結果となっている。


つまり、"山に親しんで"いるのはシニア層に多いのである。背景には、若い頃にスキーやワンダーフォーゲル、ハイキングなどが人気のあるレジャースポーツだったこともあり、リタイアを機に再チャレンジしていることがあげられる。


他方、関東では20歳代後半から行動者率が10%を超える。近年起こった登山ブームでは、山ガールや星ガール、写ガールといった言葉とともに、洗練されたアウトドアファッションも注目された。野外活動人気のなかで自然を楽しむ傾向が高まっているのであろう。


「レジャー白書2016」(日本生産性本部)によると、登山・キャンプ用品の市場は拡大しており、2005年の1,480億円から2015年には2,000億円に達した。山に関連する商品は登山グッズから食品、おむつなどすそ野が広い。そのため、アウトドア業界や製紙業界、小売業界ではビジネスチャンスと捉え、需要の掘り起こしを図っている。私は20数年ぶりに実家近くの山に登り、膝が嗤うという実体験をしたことで、膝サポーターが欲しくなった。今後、山の日の定着によって、関連商品の市場拡大に期待がかかる。



[1] 行動者:過去1年間に登山・ハイキングを行った人
[2] 行動者率:人口に占める過去1年間に登山・ハイキングを行った人の割合
[3] 平均行動日数:登山・ハイキングを行った人について、平均した過去1年間の行動日数

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