世界経済の先行きを読む-バルチック海運指数

世界全体の経済変動や商品価格の先行指標とされるバルチック海運指数(Baltic Dry Index、以下BDI)。BDIとは、英国ロンドンにあるバルチック海運取引所に、各海運会社やブローカーから提供された、1年以下の短期で契約する外航ばら積み船の運賃や用船料(船舶賃貸借料)を集計したもので、1985年1月4日を1,000として指数化している。


BDIは貨物船の需要と供給のバランスによって決まる。需要面では、モノを運ぶ貿易量によるが、荷物の内容が鉄鉱石や石炭など、最終財の生産に必要な原材料やエネルギーであるため、世界経済の景気変動に影響を受ける。


したがって、今後の経済見通しが良好であれば、最終財の増産計画が立てられ、原材料貿易が増加し、BDIは上昇する傾向がある。逆に、経済の先行きが悪くなれば減産を始めるため、貿易量は原材料から少なくなり、BDIは下落する可能性が出てくる。


この一連の流れが、BDIが世界の貿易量と、その背後にある世界経済の変動を読み解く先行指標として注目される理由となっている。


また、BDIが低下すると将来的な国内総生産(GDP)の低下が予測され、そのことによって長期金利の低下を招くとして、BDIは10年物米国債利回りと相関があるとの主張もある。


近年では、世界の貿易量の変化に大きな影響を与えているのが中国である。世界経済は中国経済の拡大と成長からこれまで利益を得ていたといえるが、中国経済の減速、貿易量の低下はBDIにも反映することとなる。


2017年2月にBDIは大きく低下した。その背景として、中国の春節(旧正月)で荷動きが一時的に停滞し、貨物船の調達が低調だったためだといわれている。中国の鉄鋼メーカーなどが春節休暇に入る前に船を確保したことで、1月下旬から用船料が急速に低下したという。


世界経済の動向をBDIが反映し、その結果を受けて各国経済の見通しが変化し、自己実現的に各国の実体経済に影響を及ぼし、再びBDIが変動する。そこでは中国の経済状況が大きく影響している。


BDIを眺めていると、世界経済の主要プレーヤーの動向と先行きを予測する重要なヒントが得られるかもしれない。

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