日本銀行のインフレ目標2%達成への本気度は?

10月30~31日、日本銀行において今後の金融政策運営を決定する政策委員会・金融政策決定会合が行われた。その結果、長短金利操作を通じた金融市場調節方針や、長期国債以外の資産買入れ方針に変更はなく、金融緩和政策は現状維持と決定された。


また、3カ月ごとに公表される「経済・物価情勢の展望」によると、インフレ率に関する目標は「2%程度に達する時期は、2019年度頃になる可能性が高い」としており、目標達成時期についても7月時点と変更はなかった。


日本銀行の判断の背景として、日本経済の先行きについて「緩やかな拡大を続ける」とみていることがある。こうしたなかで、第一に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な"需給ギャップ"は着実に改善を続けていくこと、第二に、企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化していき中長期的な予想インフレ率は上昇傾向をたどると見込まれること、第三に、原油価格などの国際商品市況の持ち直しや為替相場の円安方向への動きが輸入物価の上昇圧力を高めること、を理由として、2019年度頃に2%のインフレ目標を達成するとしている。


しかしながら、9人で構成される政策委員会では、2019年度のインフレ率について、「リスクは概ね上下にバランスしている」が3人、「下振れリスクが大きい」が6人となっている。つまり、インフレ率の見通しについて上振れリスクの方が大きいと想定している政策委員は一人もいないのである。


この状況は、2019年度が見通しの対象となった2017年4月以降、変わらず続いている。さらに、2018年度頃としていたインフレ率の達成時期が2019年度頃に先送りされた7月時点においては、9人中8人が下振れリスクが大きいとしていた。


日本銀行政策委員会のこうした状況を受け、市場関係者やエコノミストの間では、「本当に日銀は2019年度にインフレ率2%を達成できると考えているのだろうか」という目標達成に対する本気度への疑念が広がってきている。


このような疑念に対する日銀からの回答は、上記の理由に加えて「インフレ率の上昇のモメンタム(勢い)が維持されているので問題ない」というものであった。


確かに、日銀は理論的に間違ったことを言っているわけではない。しかし、現在の金融政策が人びとの予想インフレ率に働きかけるものである以上、専門家だけでなく多くの国民にも分かりやすく説明する責任があるはずだ。

いま日銀に最も必要なのは、情報発信ではないだろうか。

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