災害と向き合い、観光立国へ

2018年は各地で甚大な災害が相次いだ。6月18日に大阪府北部の地震、6月28日から7月8日にかけて発生した平成30年7月豪雨、そして9月6日には北海道胆振東部地震と大型災害が連続で起こった。その中で物流網の寸断や関西国際空港の閉鎖、北海道ではブラックアウトと呼ばれる大規模停電に陥るなど、様々な被害が発生した。このような報道を連日のように目にする度に多くの人が心を痛めたのではないだろうか。


そこで懸念されるのが、外国人旅行者の減少である。現在、政府はインバウンド政策に力を入れており、観光庁が2016年に発表した「明日の日本を支える観光ビジョン」では訪日外国人旅行者数を2020年までに4,000万人、2030年までに6,000万人に増加させるという目標を掲げている。その数は今年の6月まで毎月のように前年同月比で15%前後の伸びを記録しており目標達成に向け好調を維持していたが、伸び率は7月と8月で5%前後に停滞し、9月はついにマイナスに突入。災害が外国人の訪日客数に与える影響が明確に数字として表れる結果となった。


今後、安定して外国人旅行者を呼び込むためには、観光地としての魅力を伸ばしても、日本は災害が多いから危険な国であるという印象を他国に持たれないようにしなくてはならない。地震や台風は無くすことはできないが、災害が起こっても安心して行動できるような環境を整備することは可能である。むしろ、その点が他国への大きなアピールポイントになる可能性は大いにある。


観光庁が発表した「北海道胆振東部地震における訪日外国人旅行者のアンケート調査」によると、災害時に困ったことは「停電で情報が得られなかった」「停電でスマートフォンの充電などが困難だった」がともに67.0%で最も高かった。他にも「言葉がわからずどこに行けばよいかわからなかった」が上位に来るなど、情報を得ることに困難を感じたという感想が多く見受けられ、情報の円滑な発信が現在の課題であることが浮き彫りになっている。この点を大きく向上させることが、外国人旅行者が抱く不安を取り除くカギになるのではないだろうか。


そのためには多言語への対応や速やかな情報発信、無線LANや充電ポイントの充実は必要で、いずれも簡単な話ではない。それでも、これらを実現し、災害が起こっても安心できる国づくりをすることが観光立国への力強い一歩となるだろう。

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