消費税の使い道

2019年10月1日、消費税率が10%に引き上げられる。
今後は、軽減税率の導入に加え、時限的なポイント還元、旅客運賃や資産譲渡などにおけるさまざまな経過措置を含め、消費税制が一段と複雑化することになる。


現在、その影響などについて多種多様な意見が交わされている。そこで、ここでは改めて消費税の使い道について整理しておこう。


まず、消費税率10%の内訳は、国の歳入となる消費税(7.8%)と、地方自治体の税収としての地方消費税(2.2%)に分けられる。また、国税としての消費税収のうち1.52%分は、地方交付税として地方自治体に配分される。そのため、消費税率10%のうち国が使えるのは6.28%分となる。


消費税(国分)の使途は、1999年4月から「基礎年金」「老人医療」「介護」からなる「高齢者3経費」に限定された(福祉目的化)。さらに、2014年4月(8%への引き上げ時)には、「年金」「医療」「介護」「子ども・子育て支援」の「社会保障4経費」に限定する制度が確立された(社会保障目的税化)。


また、地方交付税として地方自治体に配分された1.52%分と、地方消費税のうち1.2%分(合計2.72%分)は、各自治体で社会保障の財源に充てることが決められている(社会保障財源化)。


したがって、消費税率10%のうち9%分は社会保障財源として使われ、地方消費税である1%分だけが使途の限定されない税ということになる。


ここで、政府の2019年度予算から金額を具体的にみると、国・地方を合わせた消費税収は約24.3兆円(国税19.4兆円、地方消費税4.9兆円)と見込んでいる。そのうち、国が使える税収分約15.4兆円は社会保障4経費に全額充てられる。また、地方分は約6.1兆円(地方交付税4兆円を含む)が社会保障財源となる。


つまり、消費税収のうち約21.4兆円が社会保障費として使われているのである。その結果、2019年度の国・地方を合わせた社会保障4経費(総額約42.2兆円)のうち、消費税が50.7%を賄っていることになる。


このなかには、年金生活者支援給付金の支給(1,859億円)や低所得高齢者の介護保険料の負担軽減強化(654億円)などの社会保障の充実分に加え、2019年10月以降の幼児教育・保育の無償化(3,882億円)や介護人材の処遇改善(421億円)なども含まれる。


消費税の目的税化には、受益者と負担者の不一致による公平性の低下や、効率的な資源配分を妨げることなど批判も多い。しかし、これは消費税導入の経緯なども含め、国民に許容される仕組みとして政治的に進められてきたともいえよう。消費税率引き上げを目前に控えたいま、国民の一人として改めてその使い道を考える必要があるのではないだろうか。

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