シニア人材の採用には「相性」が大切

多様な人材の活用が注目されるなか、2019年9月に発表した「人手不足の解消に向けた企業の意識調査」(帝国データバンク)では、今後最も積極的に活用したい人材として、シニア人材が29.2%でトップとなった。


一方で、同調査ではシニア人材を積極的に活用したいと回答した企業のなかで、人手不足の解消に向けて社会全体が「職業紹介機能の強化・充実」に取り組むべきと答えた企業は36.2%となるなど、企業とシニア人材のマッチング機能には課題が残されているといえるだろう。そこで、先日シニア人材の再就職支援に取り組んでいる方とお会いする機会があったので、その概要についてご紹介したい。


定年後も働く意欲を持ってやり甲斐を求めている"新現役"と呼ばれるシニア人材と、企業との交流を深める「新現役交流会」という活動だ。企業とシニア人材との定着が芳しくない原因の一つは、企業と求職者の間でスキル面が一致して採用に至ったとしても、相性面で一致しないことが多発していることだという。そこで、当取り組みでは採用の面談を20分間実施し、企業はスキルだけでなく人柄が適しているかを吟味したうえで採用することができる。こうした取り組みによって、マッチング率は50%超に達しており、同時に採用コストの抑制にもつながる。


もちろん、求職者にとってのメリットもある。通常は面談先の企業に出向かなければならないが、新現役交流会では様々な企業が会場に集まることによって、複数の企業と効率的に面談を行うことができる。


では、実際にシニア人材は、どのような場面で活躍することができるのだろうか。話を伺うと、社員が安心して相談できる「参謀」としての役割こそシニア人材が最も活躍しやすい場だという。日本国内の95%が「小規模企業」に分類され、その平均従業員数は8.8名。このような規模の企業からは、従来の業務や商品の改善を図ろうとしても「社長がやればいいのでは」と冷ややかな返答を受けてしまう・・・といった相談が非常に多かったという。そこで経験豊富なシニア人材が加わることによって、新企画に向けた提案や助言、相談を請け負うことができる。企業にとっては従来とは全く異なる視点や発想を得ることができるうえに、シニア人材にとっては自身の経験を生かした仕事をすることができ、再就職先でゼロから業務を覚え直すこともない。こうしたことが高いマッチング率に寄与しているといえよう。


シニア人材は「参謀」として輝ける、だからこそ企業とシニア人材は相性面におけるマッチングが重要なのだと感じた次第である。今後の人手不足の解消に、こうした取り組みが大きく貢献することを期待せずにはいられない。

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