沖縄の離島が魅力的であり続けるために

2019年10月、世の中の一般的な夏休みから少々遅れて休暇をいただいた。この休みを利用して沖縄県の八重山諸島に位置する石垣島、波照間島、竹富島を旅した。日常では味わうことのできない様々な経験を得ることができ、存分に英気を養うことができた。


これらの地域の魅力は無数にあるが、第一には透き通ったビーチだろう。いわゆるエメラルドグリーンに輝く海は、沖縄を訪れたら見ずに帰ることはできないほど美しい。さらに、満天の星空も大きな魅力だ。上記の島々は日本のなかでも南に位置していること、そして大型施設や街灯などの明かりがほとんど存在していないことから、180度に大迫力の星空が広がる。


その一方で、この旅を通して、沖縄県の離島が誇る魅力が失われる危機に直面していることも肌で感じることができた。近年になり頻繁に耳にするようになった「オーバーツーリズム」(観光公害)、すなわち観光地が耐えられる以上の観光客が押し寄せている状態は、この地域でも起こっている。ここでは沖縄県の離島の一つである竹富島の例をご紹介したい。


国を挙げて観光に力を入れていることもあり、竹富島を訪れる観光客は増加傾向にある。それにともない、林の中に捨てられるゴミも急増したという。この問題はボランティアのみでは解決できず、清掃にかかる費用も重い負担となる。そこで、全国で初めてとなる「入島料」を2019年9月から導入し、島の環境保全活動に使用している。私が宿泊した宿のオーナーは入島料の導入に深く携わった人物であったが、話を聞くなかで「本当はこのようなことはしなくない」と何度も口にしていた。


リスクは他にも存在する。竹富島の沿岸部のさまざまな場所でリゾート開発の計画が進んでいるという。島民の方々は、決してリゾート開発が一概に悪いことだとは感じていない。しかし、開発によって、台風が多い地域では大切な役割となる防風林が減少してしまうこと、そして施設の建設によって明かりが増え、従来の星空を維持できないことを懸念していた。


このように、観光が盛り上がる一方で失われてしまうかもしれないものが数多くある。ただ、オーバーツーリズムの打撃を最も受けているのは、島の自然以上に島民の精神面だと感じた。離島経済新聞社が発行している日本唯一の有人離島専門フリーペーパー「ritokei」に目を通すと、竹富島の島民の声が特集されている。そこには、「島に人が来すぎて秩序が乱れている。自転車に乗る観光客が溢れ、怖くて自転車に乗れなくなった」との悲痛な声がある。ゆったりと流れる時間も沖縄の魅力であるが、このままでは島自体の雰囲気も変わってしまう。同じく島民の声に「嬉しいと感じる観光客」として、「島の価値観に合せてくれる人」とあるように、観光客だけでなく島民にも喜ばれる観光とは何かを深く考えさせられる旅となった。

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