再編が進む自動車業界

業界再編への動きが、自動車業界で活発になってきている。9月にトヨタ自動車とSUBARUの2社で新たな業務資本提携に合意した。これが再編への皮切りとなったのか、10月には日立製作所と本田技研工業が傘下の自動車部品メーカー4社の経営統合を発表し、海外でも欧州のOEM(相手先ブランド製造)であるグループPSAとFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)が経営統合の計画を明らかにした。川上川下、国内海外を問わず、自動車業界全体として業界再編が劇的に進もうとしている。


こうした流れの背景には、<1>CASE領域への取り組み<2>米中貿易摩擦の影響の2点が考えられる。


CASEとはConnected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Sharing(シェアリング)、Electric(電動化)を合わせた自動車業界の技術革新を指し、各社が業界再編へ向かう理由として挙げている。トヨタ自動車とSUBARU、日立製作所と本田技研工業のリリース資料では、それぞれ「100年に一度の変革期」というフレーズを用いてその統合理由が説明されている。


従来までの事業領域を超えたサービスの提供が求められるなか、新たな取り組みへの対応のため、自動車業界のみならず、業界、業種を超えた業務提携、経営統合が今後もより進むだろう。


一方で、自動車産業が含まれる「輸送用機械・器具製造」の景気DIは低下している(帝国データバンク「TDB景気動向調査」)。2018年11月時点での景気DIは56.4であったが、1年後の2019年11月では41.2(前年同月比15.2ポイント減)となった。『製造』のなかで前年同月比の減少幅が、「機械製造」(同17.6ポイント減)、「鉄鋼・非鉄・鉱業」(同16.3ポイント減)に次いで3番目に大きな数値である。財務省「貿易統計」によると、10月の輸送用機器輸出の価額は1兆5,772億円で同7.4%減、なかでも自動車の部分品は同11.3%減と大きく低下した。そのうち、米国向け輸送用機器の輸出は同17.1%減、中国向けは同14.4%減となり、EU(欧州連合)向けの同5.8%増と比べ、米中貿易摩擦の影響が顕著となっている。米中の自動車市場が縮小気味に推移しているなか、競争が激化しその結果、業界再編への意思決定を早めている可能性がある。


10月の台風19号は、製造業のサプライチェーンに深刻な被害をもたらした。部品メーカーの被災により一部OEMの製造ラインが停止するなど、その影響は多大であった。業界再編が進むなかで、こうした天災に対するBCP(事業継続計画)といった面での取り組みも、今後より重要になっていくだろう。

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