「ふるさと納税」の新たな選択肢

年末が近づき、締め切り迫る「ふるさと納税」のテレビCMがよく目に入ってくる。


地方創生政策の一環として2008年度に「ふるさと納税制度」が開始されて10年が経つ。
総務省によると、初年度のふるさと納税の受入件数は全国で5万3,671件、受入額は約81億3,957万円だったが、2018年度には受入件数が2,322万3,826件、受入額は約5,127億634万円までに拡大した。導入当初は、所得税・住民税から「ふるさと納税」分の控除を受けるためには、各自で確定申告をする必要があった。しかし2015年4月から、あらかじめ申請をすれば確定申告の必要がなくなる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が始まった。手間が省かれる制度に後押しされ、2015年度のふるさと納税受入額は前年度比325%増加、返礼品や返礼率の魅力も加わり、以降、受入額は拡大の一途をたどっている。一方で、「ふるさと納税」の返礼品がニュースを賑わしたことは記憶に新しい。


ふるさと納税に関する税収の自治体間格差を是正するため、2017年4月には、総務省が返礼品に関する通知を全国の自治体に対して発表。返礼品は「地場産品」に限り、かつ返礼品の返礼割合は「3割以下」となる。この基準に沿わない自治体は「ふるさと納税」の対象外になることとなった。


返礼品の加熱ぶりがクローズアップされた「ふるさと納税」だが、「ふるさと納税」の新しい寄付の募り方である『GCF』(「ガバメントクラウドファンディング」の略)が注目されている。これは、ふるさと納税サイトを運営するトラストバンクが考案した方法で、「クラウドファンディング」の自治体版である。なかを覗いてみると、「殺処分ゼロ」や「厳しい生活環境の子どもたちを支える活動」、「被災地復興」などの項目が並んでいた。


環境省の発表によると、2017年度に殺処分された犬と猫は4万3,216匹にもなり、引取数(10万648匹)の約42.9%が殺処分されている。


このような現実問題の解決のために、明確な目標金額が設定されている『GCF』に注目が集まるのも当然かもしれない。


返礼品を選ぶ楽しみとは違う、新たな選択肢に自身の思いを託すという「ふるさと納税」。期待感が高まる思いであった。

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