買い占め問題から考える非常時の気持ちのあり方

新型コロナウイルス感染症の影響が全国的な広がりをみせているなか、世間では、マスクやトイレットペーパーなどの買い占め行為が問題となっている。
コロナウイルスの流行が騒がれ始めた1月中旬ごろからドラッグストアや量販店などからマスクが消え、大手ECサイトでは高額な転売が相次いだ。同様にトイレットペーパーも「中国から原材料が輸入できなくなり、紙がなくなる」などのうわさがインターネット上で駆け巡り、店頭からなくなってしまった。


なぜ買い占めが起こるのか紐解いていくと、経済学的には「ナッシュ均衡」で説明できるという。いつも通りに、皆がマスクやトイレットペーパーを購入していれば、誰も困ることはない。しかし、だれかが買い占め行為を行うと、自分がいざ買おうとしたときに買えなくなるという不利益を被ることになる。とりあえず買い占め行為を行えば自分だけは不利益を被るリスクが回避できる。そのため、買い占め行為は、本人だけは合理的な行動であるが、周りの人にはハタ迷惑な行動(全体では最適にならない非合理的な行動)と経済学的には考える。


確かに己の行動を鑑みても、突き詰めれば「自分さえよければよい」という点に尽きる。しかし、日本人特有の人様に迷惑をかけてはいけないという価値観から買い占め行為が起きているのではないだろうかとも考える。
風邪気味のときマスクを着用していないと人にうつすこともあり、それを心配した友人がマスクをくれることもあるだろう。そういった人様への迷惑を避けるために、少しだけ余分に買おうとする。つまり、自分だけが不利益を被るというリスクを回避したいわけではなく、日本人特有の気の回し方によって買い占めという事象がおきているのではなないかと推測する。結果として、国民全体で不利益を被っているのだが。


先日の公表した「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」内で寄せられた企業からの意見をみると、医療関係者だけでなく、老人福祉事業や土木工事業、食品を扱う卸売業でも業務に従事する際のマスクが不足しているという声が挙がっている。


一個人への影響だけではなく、幅広い職種で買い占めの影響を受けているなか、生活必需品などの購入にあたっては、過度な購入をせず、消費者として適切な行動を心掛けたい。

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