外国人労働者だからこそ輝けるフィールド

2019年4月に出入国管理法が改正された際、国会などで外国人労働者の受け入れ拡大について盛んに議論が行われたことは記憶に新しいだろう。「日本の人口の減少が続くため、新たな人手は早急に確保するべきだ」「外国人労働者を受け入れると日本人の仕事が奪われるのではないか」といった意見が飛びかった。


さまざまな意見はあって然るべきだが、ここではせっかく外国人労働者を雇用できる門戸が広がったのだから、ビジネスチャンスとして捉えたい。


では、外国人労働者はどのような場面や職種で活躍できるだろうか。外国人の強みとは、母国語に堪能であることに加え、母国やその周辺の文化に精通していることだろう。これらを生かせるフィールドは多々あるが、ここでは例として海外進出を挙げたい。


日本国内では、人口減少により市場の縮小が見込まれるなか、国外に広く目を向け、海外進出を進める重要性が一段と高まっている。ただ、当然海外進出は容易にできることではない。帝国データバンクが2019年9月に実施した「海外進出に関する企業の意識調査」では海外進出を行っている企業は24.7%となっていた。同調査では、その課題として「社内人材(邦人)の確保」がトップで、「言語の違い」「文化・商習慣の違い」が続く。これらの課題を解決するためには、現地とやり取りができる社員を現有の中から育成するか、外国語に堪能または海外経験がある人を採用するといった方法が考えられるが、非常にハードルの高い方法といえる。


そこで、これらの問題を網羅的に解決できる存在こそ、外国人労働者だ。進出したい先で生まれ育った人材がいれば、現地企業の文化・習慣を把握しながらスムーズに話を進めることができる。これは海外に進出するうえで大きなメリットとなるはずだ。


日本学生支援機構による外国人留学生に関する調査[1]をみると、卒業後の進路として日本での就労を希望する留学生は6割を超える。さらに、就職の希望職種として「海外業務」や「通訳・翻訳」「貿易業務」などグローバルな職種への人気が高い。こうした有望な人材が存在しているなかで、人手不足に対応するためだけに外国人を雇用するというのはもったいない。外国人が企業の活動の幅を広げる人材として活躍できれば双方にとってメリットが多いだろう。



[1] 日本学生支援機構「平成29年度私費外国人留学生生活実態調査」

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