いまこそ的確な"情報"が必要なとき

2020年4月7日、政府による新型コロナウイルスへの対策が新たな段階に入ってきた。本日閣議決定された緊急経済対策は、事業規模108兆円、財政支出39兆円にのぼる過去最大規模の経済対策である。新型コロナウイルスに対応する緊急経済対策は、2月13日、3月10日に続く第3弾となり、未曽有の対応策が実施されることになる。


これは、4月7日に発出される緊急事態宣言とも関連している。緊急事態宣言は非常に大きなインパクトを持つため、個人や企業などへの補償をともなう必要があり、両者はセットで行われるべきものであるからだ。


しかしながら、気がかりな点もある。これまでの対策等において、政府からの説明不足が国民の不安払拭につながっていない可能性である。例えば、4月1日に発表された全世帯への布製マスク2枚配布に対する世論の反応である。政府が目的やねらいを丁寧に説明していれば、違った反応になったのではないかと思うが、これも説明不足が招いた結果と言わざるを得ない。


この政策の目的は、早朝からマスクの購入に殺到している高齢者の不安を和らげ、勤労者にも購入できるようにすることで、多くの人にマスクが行き渡るようにすることにある。そのため、洗濯することで何度も使える布製マスクの配布が提案されたという。また、配布方法として、マイナンバーや徴税システムではなく郵便網を通じた配布としたのは、郵便局が空き家の状況を把握しており、無駄な配布を抑えるためだ。


さらに、世帯当たり2枚という内容から、子どもへの対応はどうなるのだ、という批判もあった。実はこの批判への対応も同時に進められていた。子供たちには、小中学校などを通じてマスクを配布する予定となっており、その方法は教科書の配布網を利用するという。教科書配布に際しては、どの学校に何人必要となるか網羅されていることが背景にある。


本来ならばこうした内容を踏まえた議論が必要となるが、残念ながら政府の説明不足が混乱を招いている理由のひとつになっているのではないだろうか。帝国データバンクが政府の経済対策について分かりやすく一覧表にまとめたところ、多数の問い合わせがTDBに寄せられている。これらは多くの事業者・経営者に支援策に対する情報が行き渡っていない証左とも言える。


緊急事態宣言、そして緊急経済対策においては、とにかくしっかりとした説明が求められる。政府や行政・自治体・公的金融機関・企業などは、今回の危機に際して懸命の努力を続けていることは確かである。そのため、政府にはこうした経済対策や支援策を多くの人に分かりやすく"伝える"ことの重要性をもっと持ってもらいたいところである。


現在のような非常時においては、的確な"情報"こそが新型コロナウイルスに打ち勝つ最大の武器であり防御となるはずだ。

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