新型コロナウイルス対策に活用されるビッグデータ

2020年4月7日、ついに政府は緊急事態宣言を発出。安倍首相は、同日夜に記者会見を開き、「この緊急事態を1カ月で脱出するためには、人と人との接触を7割から8割削減することが前提」[1] と述べた。この「人と人との接触」が濃厚接触を示しているのかは不明であるが、厚生労働省 [2]によると濃厚接触かどうかの判断は、「対面で互いに手を伸ばしたら届く距離(目安として2メートル)で一定時間以上接触があった場合」となっている。「人と人との接触」が上述と同じとすれば、2メートル以内での接触を7割から8割削減するということになる。「ソーシャル・ディスタンシング」(social distancing)という言葉が欧米でみられるようになったが、日本でもすでに言われている「3密」の回避とあわせて、この社会的距離を意識する必要に迫られている。


そうしたなか、Googleはスマートフォン向けアプリの位置情報を活用し、特定の場所への訪問の増減(1月3日から2月6日までの5週間の中央値をベースラインとして比較)に関するレポートを公開した[3] 。世界131カ国のデータが公開されており、日本のデータは都道府県別でもまとめられている。


東京のデータをみると、娯楽関連施設(レストラン、ショッピングセンター、テーマパーク、映画館など)への訪問は、ベースラインと比較して4月5日時点で50%減、公共交通機関(駅、バス停)へは58%減、職場へは27%減となっている。これらの数値は3月23日から29日の週以降で大幅な減少がみられ、外出自粛要請の影響がみられる。一方で、住宅は12%増となり自宅で過ごす時間が増えている様子もうかがえる。また、東京に隣接している神奈川、千葉、埼玉でも、東京と同様の傾向で推移している。


人との接触が削減されたかについて、今後、政府は具体的な数値に基づく検証と対策が求められるが、そのなかでこうしたビッグデータの活用は必須になるだろう。「疫学の父」と呼ばれるジョン・スノウは、1850年代ロンドンでのコレラ禍において死亡者の居住地を地図上に図示し、感染者が特定の井戸を使っていたことを解明した。疫学的にデータを集計、解析したことで、細菌の存在自体が発見されていなかった1850年代においても、感染症蔓延を阻止することができたのである。


4月10日、GoogleとAppleは共同プロジェクトを立ち上げ、Bluetooth技術を利用した濃厚接触の検出、追跡をするアプリを作成し、5月にリリースすることを発表した。このようなアプリの導入で、感染経路に関してより精度の高い情報が提供されることになるだろう。1850年代のロンドンと同様に感染の拡大の経路、要因が解明され、さらに効果的な対策が実施されることを期待したい。


ビッグデータを活用した新型コロナウイルス禍の収拾を図る取り組みが続くなか、私自身も事態の収束を願う一人として、さまざまな数値の推移を意識した行動を心がけたいと思う。


[1] https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2020/0407kaiken.html

[2] 厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html

[3] https://www.google.com/covid19/mobility/

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