いま、「休暇」に対する変化が求められる

新型コロナウイルス感染症の影響が続くなか、2020年のゴールデンウイークは、改元のあった昨年の10連休と打って変わって、不要不急の外出自粛が強く求められた。


仕事においては、医療従事者をはじめとする現場に出勤せざるを得ない人がいる一方で、時差出勤やテレワークなど働き方の変化を推奨している企業も多くなってきた。


新型コロナウイルスの拡大によって、働き方が徐々に変化していると実感する人も多いのではないだろうか。しかし、休暇に対する意識はすぐには変化しづらいのかもしれない。風邪や微熱などがあると自宅療養が求められるが、未だ少しの体調不良でも仕事を行うことが美徳となっていないか。また、日本のビジネスパーソンが休暇を取得することに対して、何らかの抵抗を感じるということを示す調査もある。


大手総合旅行サイトの調査[1]によると、日本人の有給休暇取得率は50%となっており、世界19カ国中3年連続で最下位となっている。また、有給休暇の取得に罪悪感を持つ日本人は58%にのぼり、世界で最も高い。


他者との調和を重視する文化なのか、仕事を休むことにより他者に迷惑をかけると考えている人もいる。しかしながら、今回の感染症拡大により、図らずも休むことが企業、同僚を守ることになり、感染拡大の防止につながると認識できたのではないか。


他方、「平成31年就労条件総合調査」(厚生労働省)によると、民間企業で病気休暇制度がある企業は25.7%と4社に1社程度にとどまっている。さらに、そのうち賃金を全額支給する企業は45.5%となっている一方で、無給の企業は33.8%と3割を超えている。つまり、体調不良が軽度の段階で体を休めようとすると、有給休暇を取得せざるを得ない状況だと推測できる。


2019年4月から有給休暇の取得義務化が始まっているが、件の影響を踏まえて病気休暇制度の充実、整備も国や行政が先頭に立って進めていくことが必要となろう。


働き方の意識は、この未曽有の感染症の影響で前向きな変化が生じていると思う。今後は休暇の取り方に対する意識や制度について変化が生じてくることを願う。



[1] エクスペディア・ジャパン、「世界19ヶ国 有給休暇・国際比較調査2018」、2018年12月10日

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