BCP策定による幅広い効果とは?

2020年6月11日に帝国データバンクが発表した「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2020年)」では、BCPを策定している企業は16.6%となり、低水準ではあったものの増加傾向となった。その他、「現在、策定中」「策定を検討している」などBCPの策定意向がある割合もそれぞれ増加している。相次いだ自然災害や新型コロナウイルスの影響が事業継続について考えるきっかけになったという企業は少なからずあるだろう。


しかし、BCPに対して「策定しても効果があるとは思えない」「本当に意味があるのだろうか」といった意見はまだまだ多い。特に中小企業からこうした声が多く、具体的な効果が描けずに策定に至っていない現状がある。


BCP策定による効果は「従業員のリスクに対する意識が向上した」をはじめとして、さまざまな効果があげられているが、事継継続の観点以外にも恩恵をもたらしている。例えば、「融資条件が改善した」(貸事務所、大阪府)や「BCPを策定したことで国から『事業継続力強化計画』の認定を得ており、補助金等の加点の材料としても役に立っている」(プラスチック製品製造、山形県)など、BCPの策定によって企業価値が向上したことで融資や補助金のような資金面の助けになったという企業からの声があった。さらに、「株主からの信頼が高まった」(印刷インク製造、大阪府)といった声にも共通するが、社外からの評価が向上するという効果があるようだ。


また、今回の新型コロナウイルスのような想定外に備えることは非常に難しいという意見も多くみられた。一方で、「策定したBCPが想定していたリスクは自然災害のみだったが、今回の新型コロナウイルス禍でも応用することができた」(銑鉄鋳物製造、群馬県)という声もある。未曾有の事態に陥った新型コロナウイルス禍のなかで何をしたらいいのか想像がつきにくい部分は多々あるが、リスクについて考える第一歩が、第二歩やその先をもたらすこともある。


このように、BCPは事業継続という当初の目的より幅広くメリットを得ることができる。「備えあれば憂いなし」という諺もあるように、リスクを想定し事前に動くことで、スムーズな事業継続や取引先への悪影響を最小限にとどめることができる。自然災害や感染症などの脅威が顕在化している現在に屈するのではなく、リスクについてこれまで以上に考えるための一つのきっかけにするというプラス思考が、次世代への事業継続につながるだろう。

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