新型コロナウイルスが就業状態に与えた影響

6月の国内の景況感は、経済活動が再開し徐々に動き始めたことで9カ月ぶりにプラスに転じ、急落傾向が下げ止まった(帝国データバンク「TDB景気動向調査」)。しかし、3月以降、新型コロナウイルスの影響が広がるなか、政府や自治体が外出自粛や休業を要請、市場機能の多くが制限され、国内需要は急速に冷え込んでいた。その結果、生産調整や一時帰休などが進められ、就業しつつも仕事をしていない「休業者」が急増していったことは確かである。


総務省が6月30日に発表した「労働力調査」によると、2020年5月の休業者数は423万人だった。4月の597万人からは174万人減少しているものの、近年200万人程度で推移していたことを考えても依然として高水準での推移が続いていると言える。


労働力調査では、休業者は以下のように定義されている。


休業者とは、仕事を持ちながら調査期間中(月末の1週間)に少しも仕事をしなかった者のうち、
  1. 雇用者(会社、団体、官公庁または自営業主や個人家庭に雇われて給料・賃金を得ている者及び会社、団体の役員)で、給料・賃金の支払いを受けている者または受けることになっている者
  2. 自営業主(個人経営の事業を営んでいる者)で、自分の経営する事業を持ったままで、その仕事を休み始めてから30日にならない者

注目されるのは、4月に休業者であった人が、5月にどのような就業状態となっていたかであろう。労働力調査は、毎月約10万人を対象に調査を行っているが、そのうち約半数が4月と5月に連続して調査対象となるため、その変化を追いかけることができる。


4月に休業者だった人は、1)引き続き休業者に留まったか、2)従業者に戻ったか、3)完全失業者となったか、4)労働市場から退出して非労働力人口となったか、のいずれかとなる。


結果は、引き続き休業者の人49.4%、従業者に移行した人44.0%、完全失業者に移行した人1.7%、非労働力人口に移行した人4.9%だった。おおむね半数の人が休業の状態が続いている一方、仕事に戻った人も多くいる。しかし、4月から5月にかけて休業者のうち6.6%の人は、完全失業者となったか、労働市場から退出することとなった。人数にすると、休業者から約10万人が完全失業者となり、約28万人が非労働力人口となったのである。


従業員数DIが正社員・非正社員ともに弱含みで推移しているなかで、新型コロナウイルスが人々の就業状態に与えた影響を深刻に受け止める必要があろう。


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