東京一極集中は是正されるのか

総務省「住民基本台帳人口移動報告」によると、2020年7月の都道府県間移動者数(都道府県の境界を越えて、日本国内で住所を移した者の数)は37万9,492人(前年同月比12.5%減)で、2カ月ぶりの減少となった。都道府県間移動者数は、4月(38万8,084人、同7.7%減)、5月(13万888人、同31.5%減)と2カ月連続で減少。緊急事態宣言が発出されたことで、引っ越しをともなう人口移動が抑制されたと考えられる。特に、5月は比較可能な2013年7月以降で最大の減少幅を記録した。6月は15万8,500人(同1.3%増)となり、わずかながら3カ月ぶりに増加したものの、7月は再び減少に転じている。

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さらに、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)における転入・転出者数をみると、7月の転入者数は2万9,103人(同16.1%減)、転出者は3万562人(同5.7%減)となり、比較可能な2013年7月以降で初の転出超過となった[1]。東京圏では長期間にわたり転入超過が続いていたなか、その傾向に歯止めがかかった格好となっている。


都内のオフィス空室率にも上昇傾向がみられる。オフィスの賃貸仲介業務を営む三鬼商事が発表した、8月の東京ビジネス地区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)の平均空室率は3.07%(前月比0.30ポイント増)となり、6カ月連続で上昇。また、平均賃料(22,822円/坪、同192円減)は低下し、2014年1月から続いていた上昇が止まった。新型コロナウイルス感染症への対策として、在宅勤務やウェブ会議の導入などに取り組む企業が多くみられるなか、都心部でのオフィス需要に落ち込みがみられる。


このように新型コロナウイルス、緊急事態宣言による影響もみられるなか、東京一極集中の傾向は今後どのように変化していくのだろうか。


国土交通省は、2019年12月から「企業等の東京一極集中に関する懇談会」を開催している[2]。私は、2019年12月に開催された第1回の議論を傍聴した。その議論のなかで、特に、女性のキャリア志向と雇用環境の実態との乖離が、地方から東京への流出要因となっているのではないかとの指摘があがっていた。総務省「住民基本台帳人口移動報告」によると、2019年の東京圏への転入超過数は、男性が6万4千人、女性が8万2千人と女性が男性を上回っており、近年では女性の東京圏への転入超過数が男性を上回る傾向が続いている。


帝国データバンクが7月に実施した「女性登用に関する企業の意識調査(2020年)」では、5年前と比べ現在の女性管理職割合が増加した企業は東京が26.0%となり、全体(21.2%)を上回っていた。また、現在と比べた今後の女性管理職割合について「増加する」と見込む企業は、東京が25.9%で全国が21.7%とこちらも東京が全国を上回っている。このように、東京と他の地域での女性登用割合や雇用環境の違いが、東京一極集中の一因となっているとも考えられる。こうした要因が解決していかない限り、今後も東京一極集中の傾向は続くのではないだろうか。


政府は、7月に決定した「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」[3]のなかで、地域創生の政策の方向として、新たな日常に対応した地域経済の構築と東京圏への一極集中の是正を掲げている。地方への移住・定着を推進するため、具体的には、地方大学の産学連携強化と体制充実、リモートワーク推進等による移住の推進等に取り組むとともに、結婚・出産・子育ての希望の実現に向けた取り組みも推進するとしている。

 
官民ともにデジタル・トランスメーション(DX)の取り組みを推し進めていくことで、都市に集積しないと得ることができなかった地理的なメリット(企業間でのやり取り、社会インフラの共有など)を地域経済でも享受できるよう、社会全体を転換していくことが求められよう。


[1]東京圏の転出者および転入者は、東京圏の境界を越えた移動者を表している。東京圏域内での移動者は含まれていない。(https://www.stat.go.jp/data/idou/2.html

[2]https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/kokudoseisaku_tk3_000107.html

[3]https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/info/#an18

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