米国史上初の女性副大統領が誕生、多様性の社会へ

2020年12月14日、アメリカ大統領選挙において538人による選挙人投票が行われ、民主党のバイデン氏が過半数(270票)を超える306票を獲得した。これによりバイデン氏が2021年1月6日の連邦議会上下両院合同会議での承認を経て、同年1月20日に第46代アメリカ大統領として正式に就任する。そして、バイデン氏の大統領就任と同時にハリス氏が副大統領に就任すれば、アメリカ史上初の女性副大統領が誕生する。


ハリス氏が2020年11月3日の大統領選挙後に行った講演の中で、次のように演説した。

「女性たちは闘い、多くのことを犠牲にしました。すべての人々に平等、自由、正義をもたらそうとしたためにです。黒人女性たちはあまりにも見過ごされてきました。(中略)すべての女性たちは投票する権利を守るために1世紀以上に及ぶ努力を傾けてきました。(中略)今夜、私は彼女たちの苦しみの闘いを思い起こします。」

(東京新聞TOKYO Web「初の女性副大統領へ「私が最後ではない」カマラ・ハリス氏の演説全文 完訳<アメリカ大統領選>」2020年11月11日より引用)

アメリカで投票時の人種差別を禁じた「投票権法」が、公民権運動の高まりを背景に成立したのは1965年。ほんの55年前の出来事だ。背景となる公民権運動のきっかけとなったのは、有名なモンゴメリー・バス・ボイコット事件。それは、一人の黒人女性ローザー・パークスの勇気ある行動が発端であった。分断や差別が社会問題と言われるアメリカで、差別と闘ってきた人たちの苦しみを知る女性副大統領の誕生は、新しい歴史のスタートになるだろうと、彼女のスピーチに明るい未来を感じた。


一方、世界経済フォーラム(World Economic Forum)が公表した「世界ジェンダー・ギャップ報告書2020」のなかで、各国における男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数が発表された。この指数は、経済、政治、教育、健康の4つの分野から作成され、男女格差が小さい国ほど数値が「1」に近くなる。日本の総合順位は153カ国中121位(スコア:0.652)となり、特に男女格差で遅れが目立ったのは政治分野で、順位は144位(同:0.049)と低位だった。


また、2020年6月30日に公開されたSDGsの達成度・進捗状況に関する国際レポート「Sustainable Development Report 2020」(持続可能な開発レポート)では、「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」において、日本は「主要な課題が残っている」と評価されており、取り組みの強化が必要な目標の1つとして位置づけられていた。


 史上初となるアメリカの女性副大統領の誕生が、日本をはじめ世界において、さらなる女性活躍のきっかけになることを期待したい。また、社会全体として多様性が求められるなか、2021年も企業の果たす役割は益々大きくなるだろう。

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