減災・防災からみる社会インフラの老朽化への気づき

2021年3月、東日本大震災から早10年。いま一度、減災・防災について考えてみたい。


「減災」という考え方は、阪神淡路大震災、東日本大震災を経て広く知れ渡った。この考え方は、防災基本計画(中央防災会議)でも、災害の発生を完全に防ぐことは不可能であることから、災害時の被害を最小化し、被害の迅速な回復を図ることであると示されている。


減災・防災を考える上で、平時から社会インフラの機能維持は非常に重要である。特に災害時に日々の暮らしや経済活動を速やかに取り戻すため、交通ネットワークの確保は生命線とも言える。そのため、豪雨で橋が流された、地震の影響から土砂でトンネルが埋まったということがないように、日頃から保守や点検が必要になってくる。


しかしながら、日本で整備されている社会インフラは、高度経済成長期に集中的に整備されており、今後急速に老朽化することが懸念されている。


とりわけ、道路橋や水門・堰などの河川管理施設では今から12年後の2033年には6割超で建設から50年以上が経過すると予想されており、老朽化への対策は急務となっている。


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他方で、社会インフラのメンテナンスに関する市場規模は日本のGDPの約1%にあたる約5兆円と推定され、さらに世界規模でみると約40倍の200兆円規模とみられている。建設業界以外からの参入や新たな技術の研究など、ビジネスチャンスは拡がりつつある。


現在、多くの業界で新型コロナウイルスの影響を受けているが、建設業界では濃淡はあるものの比較的影響が小幅にとどまっている。とりわけ土木関連の業種は、近年の自然災害の復興や復旧事業を中心に良化している様子もうかがえる。


加えて今後、加速度的に増加する老朽化インフラのメンテナンス事業は、業界の景況感を左右する大きな柱となろう。


大規模な自然災害の発生後には、各地に大きな爪痕が残る。しかしながら、少しでも甚大な被害を防ぐため社会インフラの老朽化への対策について意識を持つことは、新たなビジネスの獲得だけでなく、減災・防災へとつながっていくはずだ。

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