「2050年までの脱炭素社会の実現」が法律に!

2021年5月26日、参院本会議にて「改正地球温暖化対策推進法」が全会一致で可決し、成立した。日本政府はこれまで「温室効果ガス排出量を2050年までに80%削減(2013年度比)し、今世紀後半の早い時期に排出実質ゼロの「脱炭素」を目指す」と表明するなど、国際社会から遅れをとっていた。しかし、2020年10月に菅総理が、国内の2050年温室効果ガス排出実質ゼロを宣言し、政府は脱炭素社会に向け舵を切ることとなる。


今回の改正法では、政権が代わっても将来にわたる政策の継続が示され、「2050年までの脱炭素社会の実現」が明記されている。法律で地球温暖化対策の年限を明記している国は海外でも例が少なく、とても関心の高い出来事であった。


一方、全国の自治体(約1,700)の9割では、燃料や電気などのエネルギー代金の収支が赤字となっている。また、7割の地域では地域内総生産の5%相当額が地域外へ流出しており、経済規模の小さな自治体にとって、エネルギー代金の支出が財政に与える影響は小さくないと言える。そこで、環境省は「地域循環共生圏」を提唱している。それは、地域資源を最大限活用しながら、自立・分散型の社会を形成し、資源を補完し支え合うことで、環境・経済・社会が統合的に循環し、地域の活力が発揮されることを目指す考え方である。再生可能エネルギーの導入による雇用の創出や、売電収益をまちづくりに活かすなど、「地域循環共生圏」での取り組みによる成功例も数多く誕生している。脱炭素による地域活性化を目指す考えが広まるなか、2050年ゼロカーボンシティを表明した自治体は408となり(2021年6月14日時点、環境省発表)、2020年10月26日時点の166自治体から大幅に拡大している。


しかし課題もある。太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入による景観悪化や地滑りなどの懸念から、地域住民の反対でプロジェクトが全面廃止になった事例なども見られる。その結果、再生可能エネルギー設備の導入を条例で制限する自治体が急増している。


帝国データバンクの「温室効果ガス排出抑制に対する企業の意識調査」(2021年1月19日発表)によると、温室効果ガスの排出抑制に取り組んでいる企業は82.6%にのぼったが、温室効果ガスの排出抑制への取り組みにおける課題では、「他に優先すべき項目がある」(27.4%)や「主導する人材(部署)がいない」(26.9%)、「どこまで取り組めばいいのかわからない」(25.8%)、「取り組むためのノウハウやスキルがない」(24.5%)などが上位になった。企業における取り組みにおいても問題は多い。


新型コロナウイルスのワクチン接種においても地域差が問題となっているが、脱炭素社会の実現に向けて、政府の更なる細やかな支援が必要となろう。

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