東京五輪で期待するレガシー

2021年7月23日に開幕した2度目の東京五輪、まだまだ熱戦が続いている。


今から57年前の1964年に開催された1度目の東京五輪は、東洋の魔女と呼ばれた女子バレーボールチームや男子体操団体の活躍など多くの国民に希望と感動を与えた大会であった。それだけでなく、現在の私たちの生活に欠かせないレガシーが多く遺った大会でもあった。


東海道新幹線や首都高速道路が整備されたほか、カラーテレビの浸透やユニットバスの開発など、多数あげられる。また、今大会の開会式でも話題となったピクトグラムが世界的に使われるきっかけとなった大会でもある。


前回の東京五輪では、レガシーと呼ばれるものがさまざま思い浮かぶが、今大会ではどうであろうか。東京都が公表している「大会後のレガシーを見据えた東京都の取組-2020のその先へ-」(2021年7月)では、大会後のレガシーを見据えた9つのテーマの取り組みが期待されている。


◆大会後のレガシーを見据えた9つのテーマ
1.安心・安全       2.まちづくり      3.スポーツ・健康
4.参加・協働       5.文化・観光      6.教育・多様性
7.環境・持続可能性    8.経済・テクノロジー  9.被災地復興支援


例をあげると、「1.安心・安全」では、テロ対策やサイバーセキュリティー、感染症対策などを通じた将来の世代にわたって、世界一安全安心な都市の実現が期待されている。また、「6.教育・多様性」では、性別、障害、国籍などに関係なく多様性に富んだ真のダイバーシティ都市の実現が掲げられている。


特に私が注目しているのが、「8.経済・テクノロジー」における自動運転技術の活用である。とりわけ、現在選手村で運行しているトヨタ自動車が開発した自動運転バスの「e-Palette」だ。各国の選手たちがSNSに投稿し話題にもなった選手村構内を巡回し、選手や大会関係者などの移動をサポートしている小型のバスである。トヨタ自動車が独自開発した自動運転システムを搭載し、高精度3Dマップと運行管理による特定条件下における完全自動運転を実現、SAE(米国自動車技術者協会)のレベル4に相当するそうだ。


この近未来の乗り物が、20年後30年後には一般に普及しレガシーとして遺っていくと信じている。


ちなみに、前回の東京五輪で登場したピクトグラムであるが、広く一般に普及していったのは、その後に開催された1970年の大阪万博からといわれている。奇しくも2025年には大阪・関西万博の開催が控えており、自動運転技術の飛躍した活躍が期待できるのではないだろうか。


今回の東京五輪、多くの国民にとってはテレビの中だけのものとなっているが、新しい技術や挑戦はいたるところに存在している。競技だけでなくそれらにも目を向けることで、今大会で生まれるレガシーを感じたいものである。

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