仕入単価の上昇に関する分析(1)

輸入に関わる企業では仕入単価上昇の割合が高水準に
~ 間接的に輸入している企業の仕入単価がより上昇 ~

世界的に新型コロナウイルスによる影響が続くなか、企業の仕入単価は上昇傾向がみられる。特に2021年以降は、コンテナ不足による海上運賃の高騰や、木材、金属、燃料などの材料不足・価格上昇が顕著となり、仕入単価上昇の勢いはより強さを増している。帝国データバンク「TDB景気動向調査」によると、2021年7月の仕入単価DIは62.2(前月比1.1ポイント増)となった。仕入単価DIは2020年5月(50.5)を底にして、14カ月連続で上昇している(図1)。


【図1 仕入単価DIの推移(2020年1月〜2021年7月)】

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  1. 『運輸・倉庫』『製造』『建設』など6業界の仕入単価DIが60を上回る

  2. 2021年7月の業界別の仕入単価DIを確認したところ、『運輸・倉庫』『製造』『建設』など6業界で60を上回る水準となっていた(表1)。特に、『運輸・倉庫』(65.1、前月比2.6ポイント増)や『農・林・水産』(64.0、同2.7ポイント増)の仕入単価DIが大きく上昇している。


    また、業種別では「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(74.9、同1.9ポイント増)や鉄スクラップなどの「再生資源卸売」(74.5、同4.3ポイント減)、「鉄鋼・非鉄・鉱業」(71.3、同1.9ポイント増)など、金属に関連する業種では70を超えていた。さらに、ウッドショックの影響が大きい「建材・家具、窯業・土石製品製造」(67.5、同2.4ポイント増)や、ガソリンスタンドや燃料小売が含まれる「専門商品小売」(66.9、同0.7ポイント減)なども高水準となった。


    【表1 業界別、業種別の仕入単価DI(2021年7月)】

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  3. 輸入に携わる企業、特に間接的に輸入している企業では仕入単価上昇の割合が高い

  4. 帝国データバンクの信用調査報告書(CCR)に記載されている輸入の属性を、TDB景気動向調査の2021年7月回答データに付与し、その有無別に仕入単価DIを算出した(表2)。


    【表2 輸入に携わる企業の仕入単価DI(2021年7月)】

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    仕入単価DIは、輸入に携わる企業が63.3となり、輸入なし(62.1)の水準を1.2ポイント上回る水準となっていた。また、仕入単価が1年前と比べて『上昇』したとする企業の割合をみると、輸入あり(56.7%)は、輸入なし(46.7%)を10%上回っていた[1]。


    さらに、輸入を「直接輸入」(企業が直接海外と取引を行う)と「間接輸入」(商社などを通して間接的に海外と取引を行う)に分けて仕入単価DIを算出した。その結果、直接輸入より間接輸入している企業の方が、仕入単価が『上昇』したとする割合が高くなっていた。海上コンテナの不足などによる海上運賃の上昇の影響が続くなか、商社などを通して海外と間接的な取引を行う企業の方が、より仕入単価が上昇していると感じていることを示唆している。


  5. まとめ

  6. 本レポートでは、仕入単価の上昇の背景を探るためTDB景気動向調査の結果をもとに、業界別・業種別で仕入単価DIを算出し、さらに輸出入の有無による仕入単価DIの差も検証した。結果として、業界別では10業界中6業界で仕入単価DIの水準が60を超えていた。また、業種別では鉄鋼や鋼材といった金属関連の業種や、ウッドショックの影響が大きい建材関連の仕入単価DIが高水準だった。さらに輸入の有無別に仕入単価をみると、輸入をしている企業の仕入単価DIは輸入をしていない企業の仕入単価DIを1.2ポイント、仕入単価が『上昇』したとする割合でみると10%上回っていた。


    2021年7月に実施した同調査では、企業から「新型コロナウイルスの影響で経済活動が停滞、また資材価格が高騰し販売単価に転化できていないため収益を圧迫している」(石油卸売)や「ウッドショックによる木材、材料などの高騰により買い控えが出てきている」(木造建築工事)と言った声もあげられている。


    仕入単価が上昇する一方、企業の商品・サービスの販売単価の変化を示す販売単価DIも上昇傾向にある。しかし、仕入単価DIの上昇幅と比べるとその伸びは小さい(図2)。今後も仕入単価の上昇が続き、販売単価への転化が進まなければ、企業の収益環境の悪化が懸念される。


    【図2 仕入単価DIと販売単価DIの推移(2020年1月〜2021年7月)】
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[1]『上昇』は、「やや上昇」「上昇」「非常に上昇」を合わせたもの。表2においては、輸入ありの「やや上昇」の割合が、輸入なしの「やや上昇」の割合と比べて高くなっていた。
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