「9.11」から20年

9月になると、私は「9.11」を思い出さずにはいられない。当時、まだスマートフォンがなかったため、帰宅してニュース映像を見た時の衝撃は今でも覚えている。21世紀が始まり、世界が新しい時代の幕開けに期待や祝福を抱いていた。そのような中で起きた事件に、しばらくの間、ニュース番組や新聞から目が離せなかった。


「9.11」とは2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロのことである。イスラム過激派のテロ組織アルカイダによって行われたテロ攻撃。4基の旅客機がハイジャックされ、2基がマンハッタンのワールドトレードセンターのノース・タワーとサウス・タワーに、3基目はバージニア州のペンタゴン(アメリカ国防総省本庁舎)にそれぞれ突入し、4基目はペンシルバニア州の野原に墜落した。この一連のテロ事件で、日本人を含む約3,000人が死亡、25,000人以上が負傷している。


当時の米国ブッシュ大統領は「テロとの戦い」を掲げて、アルカイダを隠匿している疑いがあるとされたアフガニスタンのタリバン政権に対して軍事作戦を開始、2003年にはイラク戦争が開始された。この事件を契機に、世界各地でテロへの脅威が広がるなど、負の連鎖が始まったと言える。


アメリカのブラウン大学とボストン大学の研究チームがまとめた報告書によると、この20年間で、アフガニスタンとイラクでの戦闘に巻き込まれて犠牲となった市民は23万人から25万人、アメリカ兵の死者も6,900人に上るという。多くの死者を出した軍事作戦は、2021年8月31日、アメリカ軍がアフガニスタンから撤退し終了した。しかし、20年にわたる長い戦闘の結果、アメリカなどの攻撃で崩壊したタリバンが再び、アフガニスタンの全土を掌握したと宣言するなど、混迷は深まっている。


「9.11」から20年、世界はどのように変化したのだろうか。


人工知能(AI)を用いた無人小型機(ドローン)やロボットを戦場で活用する開発がすすめられているニュースを目にした。ドローンやロボットには攻撃能力も搭載されているという。


一方で2021年9月15日、米国のスペースX社が宇宙船「クルードラゴン」を打ち上げたが、その搭乗者4名はいずれも民間人で、宇宙飛行士を含まない初の宇宙滞在飛行が成功し、時代の変化を実感するニュースも聞こえてくる。


世界のあらゆる所であらゆる物が進化をしているが、平等で平和な世界へ進化することを祈らずにはいられない。「9.11」の光景から私が感じ、学んだことである。

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