新型コロナ第7波の影響、「従業員や取引先の感染」が懸念材料に

7月に入り、新型コロナウイルスの感染者数は1日あたり20万人を超え、急拡大しています。そうしたなか、TDB景気動向調査の7月の景気DIも5カ月ぶりに悪化し、前月比0.1ポイント減の41.3となりました。


同調査と併せて、2020年2月から毎月実施している新型コロナウイルスの影響に関するアンケートにおいても、新型コロナウイルスで「マイナスの影響がある」企業は、6月の63.7%から7月は69.4%に上昇。前月比5.7ポイント増となり、再び7割に迫る水準に近づいています。


【図1 新型コロナウイルスの新規陽性者数、「マイナスの影響がある」割合】

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第7波が第6波以前と大きく異なる点は、その新規陽性者数の多さです。厚生労働省が発表している新型コロナウイルスの陽性者数の推移をみても明らかなように、第7波は短期間に陽性者数が急増しています。短期間での急増によって、新型コロナウイルスが企業へ与える影響も、以前とは大きく変化しています。


図2は、新型コロナウイルスについての企業の自由回答データから作成した共起ネットワーク図です。共起ネットワーク図は、テキストデータ内で登場頻度が高い単語のうち、同一のコメント内で登場する(共起される)程度が高い単語を線で結んだネットワーク図です。また、登場頻度が多い単語ほど、大きな円で表示されます。


共起ネットワーク図をみると、「感染」という単語と、「社員」「濃厚」「接触」「業務」「自宅」「家族」などの単語が共起されています。実際に企業の声をみると、以下のような声があがっています。


  • 「社内でクラスターが発生し、一週間ほど作業所が閉鎖した」(電気配線工事)
  • 「社員の感染と濃厚接触者の発生で、事業運営に一定程度の障害が発生している」(工業用プラスチック製品製造)
  • 「家庭内の感染により自宅待機が増え出勤できず人員不足が懸念される」(自動車部分品・付属品小売)
  • 「弊社の顧客に新型コロナウイルスの感染者が出て入院になり、売掛金の回収に影響が出ている」(電気音響機械器具製造)


6月以前では「感染」と他の単語が離れた位置にあり、あくまでも社会全体の事象として認識する企業が多くみられました。一方、7月は上記の声にあるように、従業員や取引先で感染者や濃厚接触者が発生したことによる業務への影響など、「感染」を自社に関する事象として企業が捉えていたとうかがえます。


【図2 新型コロナウイルスに関する企業の声の共起ネットワーク図(2022年7月)】

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過去に類を見ない急速な感染拡大によって、新型コロナウイルスの企業への影響も従業員の感染といった、より直接的な影響に変化しています。有事に向けたBCP(事業継続計画)の見直しなど、企業は迅速な対応が求められます。


BCPについては、手洗い・うがいやテレワークの推進などの感染を「防ぐ」取り組みも重要ですが、「社員は誰も感染していないが、感染時の補充や社員不在時の対策を準備している。しかし実際になってみないと解らない部分がある」(建物売買)など、陽性者・濃厚接触者が発生し出勤が困難となった場合を想定した、代替要員の確保や、業務の引継ぎ、多能工化といった取り組みも重要となります。


また、取引先の感染拡大によるサプライチェーンへの影響も今後より一層大きくなると考えられます。そうしたなか、自社だけでなく取引先の感染対策や感染状況にも、気を配る必要があるでしょう。

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