32年ぶりの円安水準を記録、1990年はどんな年?

10月21日の外国為替市場、円相場が1ドル=151円台に下げ、1990年以来32年ぶりの円安・ドル高水準を更新しました。2022年1月に1ドル115円前後で推移していた円相場は、この10カ月で30円以上も円安に動いた格好となります。


1年も経たずに急速に進行した円安は、原油・原材料価格の上昇とあいまって企業には大きな痛手となっています。販売価格への転嫁や燃料費の節約などの対応を進めていますが、一部を除き円安の影響は、多くの企業にとって依然として悪影響となっています。


また、それにともない私たちの生活に欠かせない必需品や食料品などの値上げも相次いでおり、先行き不透明感が漂うなか、消費者にとっても厳しい年末を迎えそうです。


さて、冒頭述べた「32年ぶりの円安」ですが、30年以上前になり、覚えていないこともあると思います。私自身まだ物心が付く前になりますので、1990年(平成2年)はどのような年であったのか、振り返ってみたいと思います。書き出してみますと、今とは異なる世相が見えてきました。


当時の日本経済は、バブル経済崩壊の直前であったため危うさも感じながらも、社会全体はまだまだ明るさや勢いといった前向きな世相だったのではないでしょうか。


1990年の世相を映すユーキャン新語・流行語大賞では、流行語部門・金賞に「ちびまる子ちゃん(現象)」が選ばれ、B.B.クィーンズが歌った主題歌「おどるポンポコリン」は大ヒット曲となりました。流行語部門・銀賞は「バブル経済」が選ばれているものの、一般的には浮かれる日本人を映し出した結果と言えそうです。


1990年の主な出来事を振り返ると、1月は第1回大学入試センター試験が実施され、団塊ジュニア世代を中心に受験競争が盛んになっていました。2月は平成初の衆議院総選挙が行われ、自民党が安定多数の議席を獲得しています。


3月はバブル崩壊の引き金の一つと言われる「不動産融資総量規制」という通達が大蔵省(当時)より発せられ、土地取引に流れる融資の伸びを抑え過剰な取り引きを抑える役割を担っていました。


8月になると、イラクがクウェートへ侵攻し、テレビを通してですが、日本にとっても武力衝突を身近に感じた出来事となったようです。2022年2月から起きているウクライナ侵攻と通じる部分があるのかもしれません。


10月は東西ドイツの統一、12月には日本人初の宇宙飛行(TBSの秋山氏)が実現、また年間の海外渡航者が1,000万人を突破するなど明るい話題も並びました。


2022年は急速に進んだ円安による原材料などの価格高騰は、企業活動や国民生活への悪影響が目立っており、どちらかと言えば活気の少ない雰囲気が見受けられます。32年前の1990年も土地の高騰を中心に諸問題が生じていました。しかし世間では、あの大ヒット曲のようにピーヒャラ♪とまだまだ元気で浮かれた様子も随所で見られていたことでしょう。

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