新たな移動手段の確立へ、ライドシェアが解禁か!?

全国的なドライバー不足によりタクシーの供給量が減少しています。


帝国データバンクが国内でタクシー・ハイヤー事業を展開する企業のドライバーを含めた従業員数を調査 した結果でも、10年前の2013年時点に比べ、対象2,428社のうち69.7%が「減少」となっていました。このうち、2013年からの減少率が「5割以上」となった企業は14.5%にのぼり、タクシー会社の1割超で従業員数が10年前から半数以下に減少しています。


コロナ禍によるタクシー業界全体の業績不振に限らず、これまでも若いドライバーが少なく、新規の乗務員が確保しにくい仕事環境など構造的にドライバー確保の難しさが表れている結果とも考えられます。


こうしたなか、昨今では少子高齢化が進む山間地域だけではなくインバウンド需要が急増する観光地、人口が密集する都心部でもタクシー不足が問題となっており、その打開策の一つとしてライドシェアの解禁が議論されています。


ライドシェアとは、カーシェアリングと異なり、運転者個人が自家用車を用いて他人を有償で運送するサービスです。運転者と乗客をスマートフォンのアプリ等で仲介する、利便性が高い移動手段として位置づけられています。


しかし、これまで「白タク」(営業許可を持たず自家用車でタクシー行為を行うこと)が原則禁止されていたなかで、簡単にライドシェアの解禁とはいかないのでは?と思うところです。


すぐに思いつく懸念材料としては、やはり安全性の問題でしょう。


現在タクシー業界では、2024年4月に猶予されていた時間外労働の上限規制の適用を控え働き方改革が進んでいます。


企業や組合などに所属するタクシードライバーであれば、第2種運転免許を所持し、勤務時間の管理や休息時間の確保、アルコールチェックなど安全面に配慮した運行体制が敷かれています。


しかしながら、ライドシェアでは、運転手は普通運転免許の一般ドライバーになり、運行体制は個人の裁量にゆだねられるため、規制がなければ8時間のデスクワーク後の運行や、アルコールチェックもままならないかもしれません。また個人であるが故、事故などのトラブル対応への不安も拭えないと言えます。


一方で、ライドシェアにメリットが多いことは事実です。


利用者にとっては、アプリを使った利用のしやすさ、料金の低額化が言われています。加えて、高齢者の足の確保や交通空白地域での移動サービスの充実など、都市部だけでなく地域交通の新たな移動手段として期待できるでしょう。


また、ドライバーにとっては、自身の自由なペースで仕事ができ、同乗者がいることで移動コストの節減が可能になるなどあげられます。


さらに少し先の未来を考えてみると、ライドシェアと自動運転技術を融合したサービスには大きな期待をしています。


例えば、自家用車を活用しない時間帯でもアプリ一つで、無人でその自家用車をライドシェアとして配車し、運転者がいなくても自動運転で運行できる仕組みなど、時間と資源の有効活用につながると考えられます。つまり、ドライバー不足だけでなく、タクシー車両不足も一気に解消することができるでしょう。

自動運転技術と融合したライドシェアサービスのイメージ
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さまざま議論が進んでいるなか、私は良い面・悪い面を勘案して、とても便利な移動サービスだと思っています。しかし、安心安全な運行以外にも接遇を踏まえた乗り心地、他人の自家用車に乗るといった抵抗感などを考慮すると、私自身、まだ声を大にしてライドシェアに乗りたい!とは言えないのが本心です。










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