2007年8月の景気動向調査
景気DIは42.5、前月比0.2ポイント減と5カ月連続して悪化
2007年8月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は42.5となり、前月比0.2ポイント減少。5カ月連続の悪化となるとともに、4カ月連続して今年最低水準を更新した。
前月(7月)までの概況
- 2007年4月以降、個人消費の回復遅れや原油価格の再騰などにより企業の生産活動や設備投資に一服感が台頭し、景況感は再び弱含みの展開へ
- 7月には原油価格が市場最高値水準に達したほか、米住宅景気への懸念増幅や政局不安も重なり、景気DIは2005年2月(9)以来29カ月(2年5カ月)ぶりに43ポイント割れまで後退
8月の概況
世界的な信用収縮への警戒感増幅による株安、円高ドル安の進行
8月中旬に欧米金融機関が米サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)に対する損失を相次いで発表したことや、ファンド向け資金を凍結したことなどをきっかけに、米住宅景気や世界的な信用収縮への警戒感が再燃。これにより、海外の主要株式市場が軒並み急落するとともに、為替も一時1ドル=111円台まで円高が進行し、『金融』、『不動産』、機械関連など内外需問わず幅広い業界で景況感が大幅悪化
改正建築基準法の施行で住宅着工に遅れや手控え
2007年6月20日に耐震偽装の再発防止を目的とした「改正建築基準法」が施行されたことにより、建築確認の期間が長期化したり確認申請が手控えられたりするなどの事態が起こり、『建設』や『不動産』の景況感が悪化
史上最高値水準にあった原油価格は下落
史上最高値水準に達していたNY原油先物相場(WTI、期近)が、米景気の減退懸念や米ハリケーンの勢力衰退などにより約2カ月ぶりに一時70ドル割れまで下落。これにより、鉄鋼関連や『運輸』など一部の業界では景況感の悪化に歯止め
個人消費の低迷や原油高によって企業の生産活動に一服感が台頭していたなか、米景気への懸念がサブプライムローン問題という形で表面化し、円高ドル安も急速に進行。これまでくすぶっていたリスクが相次いで顕在化したことによって、足元経済は一層厳しさが増している。
今後の見通し
先行き見通しDIは、「3カ月後」がわずかに改善したものの、「6カ月後」「1年後」は依然として悪化基調にあり、国内経済の先行きに対しても厳しい見方に変化はない。
大手企業を中心に堅調な業績が維持され、IT在庫調整圧力の緩和に伴う生産活動の再加速への期待も高まっている。しかし、くすぶっていた米住宅景気への懸念が顕在化し、これによる金融市場の混乱が拡大基調にある世界経済に与える影響は計り知れない。米欧の中央銀行は市場への資金供給を実施し、米政府やFRB(連邦準備制度理事会)も信用保証の拡充や公定歩合の引き下げなど対策を講じているものの、サブプライムローン問題は根深く、今回の緊急措置で解決されたとは到底言えない。また、為替レートも1ドル=115円台まで戻したとはいえ、円高リスクはこれまで以上に高まっている。
こうした市場の混乱を背景に、日銀は8月の金融政策決定会合で利上げを見送った。これは、「脱談合」の加速に伴って地方経済は引き続き停滞し、個人消費も回復のめどが立たないなかで、国内経済の先行き不透明感がさらに増してきていることを表しているにほかならず、景気DIの改善は困難で、しばらく現水準での推移が続くとみられる。