2009年3月の景気動向調査
景気DIは19.4、13カ月ぶりに改善するも、低水準続く
< 2009年2月までの概況 : 後退 >
サブプライム問題が進行するなか、2008年9月のリーマン・ショック以後、金融危機が欧州へと広がって実体経済に波及した。外需の減速と内需の低迷によって収益環境が悪化し、円高や株価下落なども加わって生産や設備投資など企業活動が停滞した。
< 2009年3月の動向 : 横ばい >
2009年3月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比0.8ポイント増の19.4となり、2008年2月以来、13カ月ぶりに改善した。
内外需の低迷が続いたことに変わりはないが、業界別では低価格戦略の広がりや年度末需要などで『小売』(22.4)『サービス』(23.1)など内需関連がやや改善し、外需への悲観論が後退したことで『製造』(17.5)もわずかに改善した。一方、『金融』(21.9)は、企業業績の悪化による損失拡大への懸念が払拭されず、2カ月ぶりに悪化した。
地域別では8地域が改善。自動車不況が深刻な『東海』(17.1)も13カ月ぶりに改善したが、域内の「輸送用機械・器具製造」(3.0)などで過去最低を更新した。景気DIの改善は一時的であり、国内景気は後退期における踊り場の局面に入りつつある。
低価格戦略や年度末需要が消費を下支え → 『小売』『サービス』などが幅広く改善
・原材料価格の安定により商品価格が落ち着き始めたほか、値下げ競争の激化でデジタル家電なども価格低下が進行。企業の低価格戦略が消費者ニーズを取り込み、年度末需要も下支えして、水準は低いものの『小売』『サービス』など内需関連で幅広く改善。
外需の長期低迷への悲観論がやや後退 → 『製造』をはじめ全体をわずかに底上げ
・米新築戸建や中古住宅販売、住宅着工件数が増加し、住宅価格指数も上昇。個人消費や耐久財受注額も増加するなど、一部の米経済指標に好材料も見られたことで、外需の長期低迷への悲観論がやや後退。弱含みではあるが『製造』などを若干底上げした。
・米政府の不良資産買い取り構想や金融緩和政策などが米金融危機収束への期待につながり、日経平均株価はバブル崩壊後の最安値7,054円98銭(3月10日)を底に上昇して8,000円台を回復し、株安による企業業績への悪影響がやや緩和された。
雇用環境や所得の悪化 → 生活防衛意識の高まりが、内需回復の重しに
・雇用環境や所得が悪化するなかで、年金や医療などの将来不安は払拭されておらず、家計の生活防衛意識が一段と高まり、内需回復の重しとなった。
< 今後の見通し : 横ばい >
世界的な金融危機は収束への期待がようやく表れ始めたものの、企業の生産や設備投資、個人消費が早期に本格回復へ向かうほど、楽観はできない。
国内では、外需の低下によって輸出が減少し、減産や設備投資後退の動きが依然として続いている。景気後退による需要減は市場での価格競争を激化させており、商品価格は今後も低下傾向を余儀なくされる。これらは消費環境の改善にはつながるものの、企業にとっては収益性を低下させ、企業体力を消耗させる懸念が高い。雇用環境や所得が2008年度以上に悪化するなかで、家計の生活防衛意識の高まりが緩和される状況にはなく、個人消費の低迷は長期化するとみられる。
先行き見通しDIは、「3カ月後」(22.8、前月比1.4ポイント増)、「6カ月後」(26.7、同2.8ポイント増)、「1年後」(33.8、同2.9ポイント増)と、13カ月ぶりに3指標すべてが改善したが、内需の低迷が長期化することで、国内景気は底ばいの状況が続くとみられる。