2009年5月の景気動向調査
景気DIは20.7、内需の下支えにより3カ月連続で改善
< 2009年4月までの概況 : 後退から踊り場局面 >
米住宅バブルの崩壊に端を発した金融危機が欧州へと広がって実体経済に波及し、国内では内外需の低迷によって企業活動が停滞した。しかし、2009年4月の景気DIは企業の低価格戦略や政策的な消費刺激により2カ月連続で改善した。
< 2009年5月の動向 : 後退期における踊り場局面 >
2009年5月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比0.3ポイント増の20.7となり、3カ月連続で改善した。
業界別では6業界が改善した。外需低迷の影響が長期化し、10業界別(『その他』除く)で『建設』(19.0)に次ぐ低水準となった『製造』(19.2)に比べて、『小売』(24.0)や『サービス』(24.0)の水準が高い傾向が続いた。家計の生活防衛意識が根強いなか、企業の低価格戦略や高速道路料金の割引、定額給付金などの政策的な後押しが個人消費を刺激し、内需関連業界が景気をわずかながら下支えした。
地域別では、比較的堅調な内需が地域経済を下支えし、7地域が改善した。しかし、外需低迷の影響が大きい都市圏などでは、企業活動の停滞が続き、政策的な内需刺激も大きな改善にはつながらなかった。
雇用環境や所得の悪化、新型インフルエンザによる一時的な下押しもあって総じて回復力は弱く、国内景気は後退期における踊り場の局面が続いた。
低価格戦略や政策的な後押しが消費を刺激 → 『小売』など内需が景気を下支え
・消費者ニーズの獲得を目的としたプライベートブランドの開発など企業の低価格戦略が広がり、食料品や耐久消費財、サービスでも価格低下が進行。政策的な後押しも消費を刺激して、『小売』など内需関連が景気の下支えにつながった。
雇用環境や所得の悪化、年金などの将来不安 → 一段の内需回復にはつながらず
・雇用環境や所得の悪化が続き、年金や医療などの構造問題により将来不安が払拭されないなか、家計の生活防衛意識は根強く、一段の内需回復にはつながらなかった。
新型インフルエンザの国内発症 → 一時的な下押し要因に
・新型インフルエンザ発症の影響により、「旅館・ホテル」(15.9)が同4.6ポイント減と大幅に悪化し、「娯楽サービス」(24.5)も同1.6ポイント悪化した。『近畿』は、『小売』『サービス』など内需関連が落ち込んで3カ月ぶりに悪化した。
< 今後の見通し :後退期における踊り場局面 >
世界的な金融危機や景気後退に対する各国の金融政策や巨額の財政出動などによって、ようやく景気回復への期待も表れ始めたが、長期金利の上昇やドル安の進行も懸念されるなど、先行き不透明感は払拭されていない。
国内では在庫調整が進んでいるものの、2009年3月に一時改善(8カ月ぶり)した「生産・出荷量DI」が再び2カ月連続で悪化し、過去最低を更新。設備投資の動きも弱く、企業活動は停滞が続いている。低価格戦略により一部で勝ち組企業が出現する一方、多くは価格競争の激化による企業体力の疲弊が懸念される。夏の賞与は官民ともに軒並み悪化が見込まれ、雇用悪化とともに消費マインドは弱含むことから、物価の下落圧力は長期化するとみられ、企業の収益環境は厳しさを増す。
先行き見通しDIは、「3カ月後」(25.8、前月比1.1ポイント増)、「6カ月後」(30.5、同1.4ポイント増)、「1年後」(37.3、同1.0ポイント増)と、3カ月連続で3指標すべてが改善したが、一時的な底上げ以後は、外需が弱いなかで内需も雇用環境や所得の悪化によって下振れする可能性があり、国内景気は踊り場の局面が続くとみられる。