2009年6月の景気動向調査
景気DIは22.3、内需の底上げにより4カ月連続で改善
< 2009年5月までの概況 : 後退から踊り場局面 >
米住宅バブルの崩壊に端を発した金融危機が欧州へと広がって実体経済に波及し、国内では内外需の低迷によって企業活動が停滞した。しかし、企業の低価格戦略や政策的な消費刺激により、2009年5月の景気DIは3カ月連続で改善した。
< 2009年6月の動向 : 緩やかな回復局面 >
2009年6月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比1.6ポイント増の22.3となり、4カ月連続で改善した。
業界別では全10業界が改善。企業の低価格戦略の広がりによる消費者ニーズの取り込みや政策的な消費刺激によって、『小売』(25.1)や『サービス』(25.5)など内需関連を中心に改善が進んだ。『製造』(21.0)も生産活動に復調の兆しがみられ、売り上げもやや戻したことで4カ月連続の改善となったが、内需関連業界との格差は大きく、『運輸・倉庫』(20.6)、『建設』(20.7)に次ぐ低水準となった。
地域別では、外需低迷の影響が大きい『東海』(20.2)などでは改善の遅れが目立ったが、内需が堅調な『四国』(24.3)、『九州』(24.1)など地方圏を中心に全10地域で改善した。5年2カ月ぶりに全業界・全地域で改善したが、いずれもリーマン・ショック(2008年9月)前の水準には及ばない。
力強さには欠けるものの、国内景気は最悪期を脱し、緩やかな回復局面に入った。
低価格戦略や政策的な消費刺激 → 『小売』『サービス』など内需が景気を底上げ
・食料品や耐久消費財、サービスなどで価格低下が進行し、プライベートブランドの開発など企業の低価格戦略が拡大。定額給付金やエコポイント制度、エコカー減税・補助金なども消費を刺激し、『小売』『サービス』など内需が景気を底上げした。
中国の回復や米経済の底打ち期待 → 生産活動がやや復調、日経平均株価は1万円回復
・中国の内需刺激による家電向け部品などの需要増、米住宅着工、中古住宅販売の増加など米経済の底打ち期待、国内の生産活動の復調などにより『製造』も改善。先行きの需要期待やリスク資産への資金環流によって、原油などの原材料価格が再び上昇基調となり、日経平均株価は一時、2008年10月7日以来約8カ月ぶりに1万円を回復。
雇用や所得の悪化、年金などの将来不安 → 一段の景気底上げにはつながらず
・雇用の過剰感は緩和されず、雇用や所得は悪化。年金や医療などの将来不安も払拭されないなかで、家計の生活防衛意識は根強く、一段の景気底上げにつながらず。
< 今後の見通し : 緩やかな回復局面 >
世界各国の金融政策や巨額の財政出動などによって、景気の一段の悪化に対する悲観論はやや後退しつつあるが、欧米の雇用悪化、長期金利の上昇やドル安の進行、原材料価格の上昇も懸念されるなど、先行き不透明感も残っている。
国内では生産活動に復調の兆しがみられるものの、企業の「生産・出荷量DI」(25.7、2008年8月:44.2)は低水準での推移が続いており、設備投資の動きも弱含んでいる。低価格戦略の広がりや円高傾向によって、一部企業では増収増益を実現している。一方、需要不足が続くなかで、多くは価格競争の激化により企業体力の疲弊も懸念される。夏の賞与は官民ともに悪化し、雇用環境も懸念されるなか、政策的な消費刺激の効果は期待されるが、企業の収益環境は一段と厳しさを増す可能性もある。
先行き見通しDIは、「3カ月後」(28.1、前月比2.3ポイント増)、「6カ月後」(33.0、同2.5ポイント増)、「1年後」(39.1、同1.8ポイント増)と、4カ月連続で3指標すべてが改善した。
外需が弱いなかで政策的な消費刺激も雇用や所得の悪化で息切れする可能性があり、力強さには欠けるものの、国内景気は緩やかな回復が見込まれる。