2009年7月の景気動向調査
景気DIは23.1で5カ月連続改善、国内景気は緩やかな回復続く
< 2009年6月までの概況 : 急速な後退から緩やかな回復 >
米住宅バブルの崩壊に端を発した金融危機が欧州へと広がって実体経済に波及し、国内では内外需の低迷によって企業活動が停滞した。しかし、企業の低価格戦略や政策的な消費刺激により、2009年6月の景気DIは4カ月連続で改善した。
< 2009年7月の動向 : 緩やかな回復局面 >
2009年7月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比0.8ポイント増の23.1となり、5カ月連続で改善した。
業界別では9業界が改善した。政策的な内需喚起や企業の低価格戦略の広がりが消費者ニーズを取り込み、『小売』(25.7)や『サービス』(26.0)など内需関連の改善が進んだ。『製造』(22.2)も内需の底上げや中国など外需の復調によって、生産活動に持ち直しの動きが広がり、5カ月連続で改善した。しかし、内需関連業界に比べると依然として回復は遅れており、『建設』(21.5)『運輸・倉庫』(22.1)に次ぐ低水準となった。
地域別では9地域が改善した。前月に続いて、内需が堅調な『四国』(25.8)や『九州』(24.7)など地方圏が全国上位となったほか、力強さには欠けるものの製造業も緩やかな改善を持続したことで、『南関東』(24.5)や『東海』(21.0)など都市圏も改善した。
いまだ低水準ながらも、国内景気は最悪期を脱し、緩やかな回復を続けている。
①外需が復調 → 企業の生産活動に持ち直しの動き広がる
・2009年4~6月期の輸出数量指数(内閣府)は前期比10.8%増と、5四半期ぶりに改善。特に中国などアジア向けは同18.2%増となるなど外需は復調しつつあり、2009年7月の設備稼働率DI(TDB景気動向調査)も4カ月連続で改善した。
・生産活動の持ち直しが業績回復期待にもつながり、7月中旬に9,050円33銭まで下げた日経平均株価は再び1万円台を回復し、年初来高値を更新した。
②政策的な消費喚起や企業の低価格戦略 → 『製造』『小売』『サービス』などを底上げ
・エコポイント制度やエコカー減税・補助金などの政策的な後押しが消費を喚起したほか、食料品や日用品を中心にナショナルブランドの値下げやプライベートブランドの開発・投入などの低価格戦略が需要を取り込み、関連業界が底上げされた。
③収益環境の厳しさ続く → 一段の業況回復には至らず
・雇用や所得が悪化するなか、消費者からの価格下押し圧力の増大によって収益環境は厳しさが続いており、一段の業況回復には至らなかった。
< 今後の見通し : 緩やかな回復局面 >
◇世界経済は回復の兆しが見え始めたが、先行き不透明感は払拭されず
・雇用悪化で欧米や中国でも生産や消費は不安定。長期金利の上昇やドル安も懸念。
◇国内は企業活動が緩やかに持ち直しているが、本格回復せず
・企業の生産・出荷量DIや設備稼働率DI(TDB景気動向調査)は緩やかに改善しているが、雇用や設備など投資に対する動きは弱含んでいる。
・一部に好業績を達成している企業はあるが、多くは市場の縮小や競合激化による業況低迷の長期化への危機感が強まり、収益基盤の強化を目指した再編の動きも目立つ。
・秋以降、衆院選(8月30日投開票)後の新政権による政策期待があるが、政局流動化による政策決定の遅れなど、景気への悪影響も懸念される。
先行き見通しDIは、「3カ月後」(28.4、前月比0.3ポイント増)、「6カ月後」(32.4、同0.6ポイント減)、「1年後」(38.3、同0.8ポイント減)となった。
短期での需要不足解消は見込めないものの、外需の復調と政策的な内需の底上げによって、国内景気は緩やかな回復が見込まれる。