2009年8月の景気動向調査
景気DIは24.5で6カ月連続改善、低水準ながらも国内景気は緩やかな回復続く
< 2009年8月の動向 : 緩やかな回復局面 >
2009年8月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比1.4ポイント増の24.5となり、6カ月連続で改善した。
業界別では8業界が改善した。国内の政策的な内需喚起に中国向けなどの輸出の回復傾向が加わって、企業の生産活動がやや復調し、『製造』(24.0)が6カ月連続で改善。低価格戦略の拡大や品質向上などで消費者ニーズの獲得を図っている『小売』(26.4)や『サービス』(27.5)など内需関連業界も引き続き改善した。
この結果、景気DIの改善幅は、2009年3月から続いている半年間の改善基調のなかで同年6月(1.6ポイント)に次ぐ大きさとなった。この半年間で『製造』は当初3カ月間の改善幅が2.2ポイント、直近3カ月間が4.8ポイントであるのに対して、『小売』は同3.5ポイント、同2.4ポイントとなり、直近では『製造』の底上げが目立つ。
地域別では、内需が比較的堅調な『四国』(28.2)や『九州』(25.7)など地方圏をはじめ、外需急減の影響が大きかった『東海』(22.6)でも改善基調が持続し、2カ月ぶりに全10地域が改善。
いまだ低水準ながらも、国内景気は緩やかな回復を続けている。
①外需が復調 → 企業の生産活動は持ち直しの動きが続く
・中国などアジア向けを中心に外需が回復傾向となり、『製造』の設備稼働率DI(TDB景気動向調査)は5カ月連続で改善。企業の生産活動の持ち直しが業績回復期待にもつながり、日経平均株価は8月26日に1万639円71銭と年初来高値を更新。
②政策的な消費喚起や企業の低価格戦略が拡大 → 内需関連業界などを底上げ
・エコカー減税・補助金やエコポイント制度などの政策的な後押しが消費を喚起し、ナショナルブランドの値下げやプライベートブランドの開発など、低価格戦略が内需関連業界を底上げ。低価格志向を反映して、利便性や割安感のある通販市場も伸長。
③所得減や雇用悪化、天候不順、新型インフルエンザ → 景気の本格回復の重しに
・所得減や雇用悪化に加え、豪雨災害や地震、長雨や日照不足など冷夏で季節商材が伸び悩み、夏場に予期せぬ新型インフルエンザの流行期入りも、本格回復の重しに。
< 今後の見通し : 緩やかな回復局面 >
先行き見通しDIは、「3カ月後」(30.2、前月比1.8ポイント増)、「6カ月後」(33.4、同1.0ポイント増)、「1年後」(39.3、同1.0ポイント増)と、2カ月ぶりに3指標すべてが改善した。
世界経済は、各国における金融緩和政策や巨額の財政出動をともなう内需刺激策が奏功し、最悪期を脱しつつある。しかし、欧米をはじめ中国などでも雇用情勢は好転しておらず、消費動向には先行き不透明感が漂っている。
国内経済は、外需の復調と内需の底上げによって生産・出荷量DI(TDB景気動向調査)が改善基調にあり、生産活動は緩やかな回復が見込まれる。厳しい収益環境のなか、企業は固定費の削減により収益構造の転換を進めている。強者連合など大型再編も起こっており、経営基盤強化へ向けた動きは今後も活発化するとみられる。こうしたなかで、従業員数DI(同)は過去最低を更新しており、雇用や所得の悪化が需要の回復を下押しする懸念もある。衆院選(8月30日投開票)は民主党が勝利し、中小企業支援や生活・雇用対策、地方分権などへの期待はあるが、財源などには課題もある。
今後の国内景気は、外需の復調と政策的な内需の底上げに期待がかかるが、内需にはやや息切れの兆候もあり、力強さに欠ける緩やかな回復にとどまるとみられる。