2009年9月の景気動向調査
景気DIは24.7で7カ月連続改善するも、国内景気は足元の弱さを露呈
< 2009年9月の動向 : 回復基調に変調の兆し >
2009年9月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比0.2ポイント増の24.7となり、7カ月連続で改善した。
業界別では6業界が改善した。企業の生産活動は復調が続き、『製造』(24.4)や『小売』(27.0)などは7カ月連続で改善した。しかし、景気は本格回復しておらず、急速な円高の進行や新型インフルエンザによる悪影響などで改善幅(0.2ポイント)は前月(1.4ポイント)に比べて大きく鈍化。長期化するモノやサービス価格の下落による収益性の低下や設備投資の低迷、補正予算の執行停止の動きなども影響して、内需の底上げに外需の復調が加わる前月までの改善傾向は、減速を余儀なくされた。
地域別では6地域が改善。内需がやや堅調な『四国』(27.3)や『九州』(25.7)などは比較的高水準であったが、改善の遅れが目立つ『東海』(22.7)が全国10地域中で最低の『北陸』(22.2)に次ぐ低水準となるなど、前月の10地域そろっての改善から一転、バラツキが生じた。
国内景気は足元の弱さを露呈しており、これまでの回復基調に変調の兆しがみられる。
①政策的な内需底上げや外需の復調 → 企業の生産活動は持ち直しの動きが続く
・エコカー減税・補助金やエコポイント制度などの政策的な後押しが消費を喚起し、中国などの内需刺激で外需も復調。「生産・出荷量DI」は4カ月連続で改善、「設備稼働働率DI」は5カ月連続で改善するなど、生産活動は持ち直しの動きが続いた。
②急速な円高進行や物価の下落基調 → 企業の収益環境は厳しさを増す
・円高が急速に進行。内需が弱いなか、消費者の節約志向の取り込みを目的とした企業の低価格戦略が一段と広がり物価が下落。プライベートブランド商品の投入や値引き要請、低価格店の出店拡大など価格競争が激化し、企業の収益環境は厳しさを増した。
③雇用悪化や新型インフルエンザ、補正予算の執行停止 → 売上高、受注見込みを下押し
・長期化している雇用悪化や所得減が消費増の重しとなったほか、流行期入りした新型インフルエンザによって、外食やホテルなどのサービス業を中心に売上高は低迷。新政権による補正予算の執行停止の動きも建設関連などの受注見込みを下押しした。
< 今後の見通し : 踊り場局面の可能性も >
世界経済は最悪期を脱しつつある。しかし、欧米や中国でも雇用環境は早期の改善が見込めず、内需は脆弱である。米財政の悪化や根強い先行き不透明感、G20において世界経済の不均衡是正の必要性が認識されたことなどがドル安に拍車をかけている。
国内経済は、政策的な消費喚起が内需の底上げにつながり、外需の復調も期待されることで、企業の生産活動は今後も緩やかに持ち直すことが見込まれる。企業は設備や雇用への投資効率を向上させるなど収益構造の転換を進めており、国内市場縮小への危機感が強まるなかで、再編の動きも活発化するとみられる。一部大手では業績の早期回復も期待される。しかし、雇用情勢の改善が遅れることで個人消費は伸び悩み、物価も下落基調が続いて収益環境の厳しさは長期化する可能性が高い。2009年度補正予算の執行停止による生産、投資活動への影響拡大も懸念される。
景気予測DIは「1カ月後」(25.6、当月比0.9ポイント増)、「3カ月後」(26.9、同2.2ポイント増)、「6カ月後」(27.5、同2.8ポイント増)となった。政策的な消費喚起や外需の復調が底上げするものの、リーマン・ショック前の水準には至らない。今後の国内景気は、雇用環境や消費、設備投資動向など不透明要素が大きく、踊り場局面を迎える可能性もある