2010年8月の景気動向調査
景気DIは33.2で8カ月ぶりに悪化、国内景気は失速
< 2010年8月の動向 : 回復局面 >
2010年8月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比0.3ポイント減の33.2となり、8カ月ぶりに悪化した。
業界別にみると、『製造』(35.9)や『卸売』(33.5)、『小売』(33.2)、『サービス』(33.6)などが8カ月ぶりに悪化した。
特に、これまで国内景気の回復をけん引してきた『製造』では、電機や自動車関連業種が悪化に転じ、他の業種もそろって悪化したことから、『製造』は今回の景気回復局面で最大の悪化幅となった。円高の進行や欧米の景気減速の影響に加えて、国内でも自律回復の動きは弱く、政策支援による底上げ効果も縮小している。
国内景気は失速しており、回復局面には変調が表れ始めている。
① 円高や欧米の景気減速などで、『製造』は8カ月ぶりに悪化
・『製造』では円高の進行(15年1カ月ぶりに一時1ドル=83円台に突入)や欧米の景気減速、国内でも政策効果の縮小による影響などで、「電気機械製造」が1年6カ月ぶりに悪化し、「輸送用機械・器具製造」も1年5カ月ぶりに悪化した。
・他の業種でも悪化が目立ち、『製造』12業種中11業種が悪化したことで、好調な外需や政策支援により改善を続けてきた『製造』は前月比0.8ポイント減と8カ月ぶりに悪化し、リーマン・ショック以降の景気回復局面で最大の悪化幅となった。
② 雇用環境や所得低迷の長期化で、自律回復の動きは弱く、政策効果も縮小
・連日の猛暑で飲料水や涼感ウェアなどが好調で、エアコンやエコカーなども需要増となったが、業種全体では「飲食料品小売」や「繊維・繊維製品・服飾品小売」、「家電・情報機器小売」が悪化し、「自動車・同部品小売」は0.1ポイント増にとどまった。
・夏の需要期に猛暑効果で季節商材が盛り上がり、エコカーや家電向けなどの政策支援が継続していたにもかかわらず、『小売』は0.5ポイント減と8カ月ぶりに悪化した。雇用環境や所得低迷、デフレが長期化するなか、依然として自律回復の動きは弱い。
< 今後の見通し : 踊り場局面 >
大手製造業を中心に2010年度上半期の企業業績は回復傾向にある。政府による新たな経済対策や、円高進行に対する日銀の追加の金融緩和政策など、財政・金融政策による下支えにも期待がかかる。しかし、民主党代表選の党内対立の影響により、いまだ政策見通しは不透明で、金融政策にも手詰まり感が強い。
また、欧米の景気減速や中国の成長鈍化によって、今後の外需は楽観できない状況にある。国内では企業の投資姿勢が慎重で、雇用や所得の大幅な改善も期待できず、メーカーや小売・サービス業など幅広い業界における海外シフトの加速やデフレのさらなる長期化も懸念される。レアアースや鉄鉱石、穀物の高騰など世界的に激化している資源争奪戦は、為替動向とともに今後の企業収益の不安定要素となる可能性が高い。
景気予測DIは「1カ月後」(33.1、当月比0.1ポイント減)、「3カ月後」(33.0、同0.2ポイント減)、「6カ月後」(32.7、同0.5ポイント減)となった。
国内景気は踊り場局面となる可能性が高く、一段の下振れも懸念される。