2011年3月の景気動向調査
景気DIは31.6、東日本大震災で前月比3.8ポイント減と急落
< 2011年3月の動向 : 大きく下押し >
2011年3月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は前月比3.8ポイント減の31.6となり、5カ月ぶりに悪化した。過去最大の悪化幅を記録したリーマン・ショック後の同4.1ポイント減(2008年12月)に次ぐ急落となり、2010年10月(31.5)以来の水準に後退した。
3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震と津波被害、それにともなう福島原発の事故によって、東日本を中心に企業の生産活動をはじめ、小売やサービスなど幅広い業界で企業活動が大きく落ち込んだ。また、消費意欲が低下して不要不急のモノやサービスが総じて需要減となった一方、一部の飲食料品や日用品、ガソリンなどでは需給バランスが崩れて品不足が深刻化し、東北・関東地方の電力不足、放射能汚染の拡大も社会的な混乱を増幅させた。
さらに、海外による日本への渡航自粛の広がりも影響して、国内の観光需要が急減したほか、農畜産物や水産物の禁輸措置、輸入の自主規制などの動きも現れ始めており、東日本大震災の影響は未曾有の事態に陥っている。
国内景気は内需の停滞が顕著で海外では日本の一次産品などを敬遠する動きも起こり、大きく下押しされている。
・東日本を中心に企業活動が落ち込み、消費意欲も低下して、内需の停滞が顕著に
地域別では全10地域が悪化し、特に『東北』『北関東』『南関東』は過去最大の悪化幅を記録。『東北』は全国10地域中、8年1カ月ぶりに単独最下位となり、これまで景気回復をけん引してきた『南関東』は初めて全国(31.6)を下回った。
業界別では全10業界が悪化し、特に『小売』『サービス』は過去最大の悪化幅で、内需の停滞が顕著となった。業種別でみても全51業種のなかで、家電エコポイント終了前の需要増によって下支えされた「家電・情報機器小売」を除く50業種が悪化。うち「輸送用機械・器具製造」や「各種商品小売」「旅館・ホテル」など19業種は過去最大の悪化幅となるなど、東日本大震災の悪影響は幅広く深い。
< 今後の見通し : 緩やかな回復見込みも、不透明感漂う >
震災による被害の全容はいまだ把握できない状況にある。東北・関東地方の電力不足は長期化する見込みで、企業活動の停滞や消費意欲の低下など多方面にわたって悪影響が長引く可能性が高い。また、福島第一原発の事故に収束の見通しは立っておらず、世界的にも深刻な放射能汚染の広がりは内需の停滞に拍車をかけるだけでなく、外需の日本離れを拡大、長期化させることにもつながりかねない。
こうしたなか、政府や自治体は補正予算を策定中で、インフラ整備などの復興需要が増大することが見込まれる。新興国の成長も背景に、東海や近畿、九州などが景気を下支えしながら、官民一体となった復興への取り組みが活発化することが期待される。
景気予測DIは「1カ月後」(32.8、当月比1.2ポイント増)、「3カ月後」(33.2、同1.6ポイント増)、「6カ月後」(34.6、同3.0ポイント増)となった。
前月には踊り場を脱したとみられた国内景気だが、今後は極めて緩やかな回復にとどまるものとみられ、原発事故のほか円高や原材料高、政局など懸念材料は多く、不透明感が漂っている。