2011年4月の景気動向調査
景気DIは30.4、前月比1.2ポイント減と2カ月連続で悪化
< 2011年4月の動向 : 停滞するも、復興の兆し見え始める >
2011年4月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は前月比1.2ポイント減の30.4となり、2カ月連続で悪化した。
福島第一原発の事故は、事故後1カ月を経過して原子力事故の評価尺度(INES)に基づく暫定評価が最も深刻なレベル7に引き上げられた。放射能汚染の広がりや汚染水の放出などでも情報公開の遅れが指摘されるなど、海外では日本を敬遠する動きに拍車がかかった。また、為替動向は不安定で原材料価格も騰勢を強めるなど企業の収益性は厳しく、相次いだ強い余震も家計や企業のマインドを下押しした。さらに、統一地方選挙の結果も受けて政局は不透明感を増し、復興政策や原発対応への懸念も強まるなど、震災後の閉塞感を払拭するには至っていない。
ただ、企業の生産活動には復調の動きもみられ、個人消費も生活必需品などでは底堅い。新興国向け需要も工作機械や電子部品などで好調を維持している。
国内景気は停滞を余儀なくされているが、内需の下支えによって一段の急落には陥らず、復興の兆しも見え始めている。
・サプライチェーンの混乱や原材料高、海外の日本敬遠の動きも影響し、企業収益が低下
サプライチェーンの混乱による部材の供給不足は生産活動回復の妨げとなっている。また、海外では日本の農水産物や加工食品のほか、被災地域外の工業製品にも取引を敬遠する動きが拡大。加えて、世界的な原材料高も企業の収益性低下につながっている。
しかし、震災直後に比べ飲食料品など内需関連業種で復調の動きがみられ、他業種でも設備の新設・復旧へ向けた投資マインドや金融機関の融資姿勢にも改善がみられる。
・生活必需品は堅調な一方、不要不急のモノやサービスは停滞、個人消費の二極化強まる
生活必需品は需要が堅調で「飲食料品小売」や「各種商品小売」などが改善し、『小売』は2カ月ぶりに改善した。しかし、家電や自動車、外食や観光関連業種は停滞し、特に「旅館・ホテル」は過去最低を更新するなど、個人消費は二極化の傾向が強まった。
< 今後の見通し : 不透明要素を抱えながらも、緩やかな復調へ >
福島第一原発の事故の収束には長期化が避けられない見通しとなっている。夏季や冬季などの電力需要期には東北や関東地方の電力不足が景気回復の足かせとなるほか、不安定な為替や原材料価格の動向も先行き不透明感を増幅させる要因となっている。海外では日本の一次産品に加えて工業製品に対しても風評被害が拡大しており、また、渡航自粛が長引くことによって全国的な観光需要の縮小につながる恐れもある。
こうした厳しい情勢下だが、企業の生産活動はサプライチェーンの回復や被災地の復興へ向けた動きの活発化にともなって徐々に持ち直していくとみられる。さらに、政策支援の実効性を高めて消費意欲の回復にもつなげることで、景気回復への好循環が生まれることが期待される。
景気予測DIは「1カ月後」(31.9、当月比1.5ポイント増)、「3カ月後」(33.0、同2.6ポイント増)、「6カ月後」(34.3、同3.9ポイント増)となった。
国内景気は余震や原発事故など不透明要素を抱えながらも、緩やかな回復基調を取り戻すとみられる。