2011年5月の景気動向調査
景気DIは31.4、前月比1.0ポイント増と3カ月ぶりに改善
< 2011年5月の動向 : 回復基調を取り戻しつつある >
2011年5月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は前月比1.0ポイント増の31.4となり、3カ月ぶりに改善した。
サプライチェーンは回復途上であり、原材料価格も上昇傾向にあるものの、企業の生産活動には回復の動きが現れ始めている。家計の消費活動も緩やかではあるが回復が広がっており、生活必需品のほか、不要不急のモノやサービスなどでも幅広い改善がみられた。ただ、いずれも回復に力強さはなく、全51業種のなかで震災前の水準に戻したのはわずか3業種にとどまった。
景気DIは震災から3カ月目にしてようやく改善に転じたが、震災前(35.4:2011年2月)を大きく下回る水準が続いており、震災や福島第一原発事故に加えて、デフレや円高、雇用不安なども設備投資や消費マインドのさらなる改善の妨げとなっている。
国内景気は供給面、需要面の緩やかな改善によって回復基調を取り戻しつつあるが、依然として弱含みの状況にある。
・企業の生産活動は回復の動きが現れ始め、消費も生活必需品を中心に幅広く改善
企業の生産や出荷、設備稼働率などは復調傾向となり、『製造』をはじめ全10業界が3カ月ぶりにそろって改善した。さらに、緩やかではあるが設備の新設・復旧へ向けた投資マインドの改善もみられる。
また、消費面では「飲食料品小売」や「医薬品・日用雑貨品小売」などの生活必需品関連業種が比較的堅調であったほか、衣料や家具、自動車、外食や観光・レジャー関連業種など不要不急のモノやサービスでも幅広く改善した。
・震災や原発事故に加えてデフレや円高などの影響も大きく、回復に力強さはない
しかし、震災の爪痕は深く、福島第一原発事故の長期化も企業や家計のマインド改善の妨げとなったほか、価格競争の激化や不安定な為替動向、長引く雇用不安などもさらなる改善を抑制する要因となった。
< 今後の見通し : 緩やかな回復 >
福島第一原発の事故は収束しておらず、事故後2カ月が経過して1号機におけるメルトダウンが公表されるなど、原発事故やその情報公開に対する国内外の不信感は依然として払拭されていない。このことは被災地周辺の農産物だけでなく、国内の一次産品や工業製品、観光への悪影響を長期化させる要因ともなっている。政局も安定しないなか、今後の復興政策や財政、税制改革などへの懸念も残る。
しかし、生産や販売などの企業活動は緩やかな回復が見込まれる。消費面も含めて夏季の電力不足による影響は避けられないが、節電対策は新たな需要も生みだしており、いっそうの取り組み拡大による生産や消費活動への好影響も期待される。
景気予測DIは「1カ月後」(33.0、当月比1.6ポイント増)、「3カ月後」(34.4、同3.0ポイント増)、「6カ月後」(36.0、同4.6ポイント増)となった。
国内景気は原発事故の長期化が重しとはなるものの、緩やかな回復基調を維持するとみられる。